新型コロナウイルスの警戒から、成長率予測引下げ
フィリピン政府は、デルタ型のような感染力の強い型が存在することから、COVID-19の検疫規制の解除には、約5,000万人にワクチンを接種する必要があると述べていて、今年中には検疫規制の完全解除は難しいとの見解を示しています。
このような中、「S&P」はフィリピンの今年の成長率予測を7.9%から6%に引き下げました。フィリピン経済の70%が個人消費であることを考えると、経済回復スピードにブレーキがかかりますことになります。
一方3月末時点での銀行預金残高は8%増の11兆8,000ペソ億円となっています。超低金利にも関わらず銀行預金残高が増加しているのは、パンデミックの影響でまだ多くの不確実性があるため、国民が消費を控えていることを示しています。
中央銀行(BSP)は景気下支えのため、政策金利を2%に据え置きました。
株式市場の回復基調は鮮明に
コロナの状況についてお知らせします。1回目のワクチンを750万人、2回目を250万人が接種しました。7日間の平均接種数は236,867人で、ゆっくりではありますが、ワクチン接種率が上がってきています。フィリピン政府はこのペースをさらに上げ、集団免疫の早期達成(約5,000万人)を目指しています。
投資家は国内のCOVIDの状況を注視しており、実態経済の持続可能な回復は、ワクチンの普及と供給の改善のペースにかかっています。
フィリピンの株式市場全体のバリュエーションですが、2021年決算予想ベースのPERは19.6倍と過去5年および10年の平均値である18~18.2倍と比較すると、やや割高感があります。
ただ、PERには利益成長予測が組み込まれていません。そこで、フィリピンの株式市場の向こう2年間の潜在成長率を加味したペッグレシオを算出すると、0.47となり逆に割安と見ることもできます。
実態経済に先んじて、フィリピン株式市場の回復基調はかなり鮮明になってきたように見えます。その証左として、海外機関投資家の買越額がブロックセールスを除いて約25億ペソまで積み上がってきています。
フィリピン企業をめぐる、最新のトピックス
■コロナの影響大な航空業界
コロナによる影響が甚大な「フィリピン航空」の取締役会は、大規模な事業再構築・再建計画を策定しています。
■新たなREITを計画
フィリピン大手財閥ファミリーの一角である「Villar Family」がグループの大手不動産ディベロッパー「ビスタランド」の資産を組み入れるRTEITを計画しています。昨年REITがスタートしたフィリピンでは、現在アヤラREITとダブルドラゴンREITが上場していますが、これに追随する形で他のお大手不動産ディベロッパーがこの市場への参入を計画しています。
■新規上場を巡る動き
「Villar Family」は、グループのスーパーマーケットチェーン「Allday」の今年の上場も目指しています。
直近2回のIPOは、ブロードバン通信の「コンバージ」、食品メーカー「モンデニッシン」と、ともに1000億円を超えるユニコーンIPOだったこともあり、初値から勢いよく株価が跳ね上がるという展開ではなく、ジリジリと値を上げていく展開でしたが、「Allday」は想定されている時価総額が60億ペソ程度の小型株なので、昨年IPOから3日連続ストップ高を記録した「メリーマート」のような瞬発力が期待されています。
■三井住友銀行と提携
「三井住友銀行(SMBC)」がフィリピンの中堅銀行「RCBC」の株式5%を取得したというニュースが入ってきました。「RCBC」は日本のメガバンク「三井住友銀行」の強みを生かそうとしています。個人と法人向けデジタルサービスにおいて、「三井住友銀行(SMBC)」は少なくとも40カ国以上で事業を展開しており、「RCBC」はこの分野で支援を受けることができます。、「三井住友銀行(SMBC)」は、「RCBC」に出資する金融機関としては、台湾の生命保険会社(23.35%)に次ぐ第2位となりました。