2021年6月調査 日銀短観

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

大企業・製造業・業況判断DIは+14、18年12月調査以来の高水準に

 

大企業・非製造業・業況判断DIは+1、20年3月調査以来5期ぶりのプラス

 

21年度全規模・設備投資計画(含ソフトウエア・研究開発、除く土地)+9.3%

 

 

●6月調査日銀短観では、大企業・製造業・業況判断DIが+14と3月調査の+5から9ポイント改善し18年12月調査の+19以来の水準になった。輸出持ち直し、生産の増加基調が継続し、3月調査より製造業全体の景況感は改善した。

 

●大企業・製造業で「悪い」と答えた割合は17年12月調査で4%まで低下したが、そこを底に19年12月調査では12%、20年3月調査では19%と増加し、6月調査で41%まで大きく増加した。しかし一転改善に転じ、9月調査34%、12月調査22%、21年3月調査14%に続き、今回9%まで4期連続で低下した。

 

●なお、今回6月調査で「悪い」と答えた割合は「最近」の9%に対し、「先行き」では7%と2ポイント減少の見込みであり、さらに良くなる見込みだ。但し、「良い」と答えた割合は「最近」では23%、「先行き」では20%でこちらは3ポイント減少の見通しとなっている。

 

 

●6月調査の大企業・製造業の業況判断DI+14は9月調査の「先行き」見通し+4を10ポイント上回り、足元の景況感が先行き予想を上回ったことになる。

 

●大企業・製造業の「先行き」業況判断DIは+13と「最近」の+14から1ポイントの悪化が見込まれているが、「悪い」が増えるわけではなく、新型コロナウイルスの感染状況に対する不透明さが影響していると思われる。

 

●6月調査の21年度下期の想定為替レートは105円54銭で、足元の実際の為替レート(7月1日東京市場午前9時台は1ドル=111円台)よりかなり円高水準である。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIでは、前回3月調査で▲1のマイナスだったが、今回6月調査では2ポイント改善し+1と、20年3月調査以来5期ぶりのプラスになった。

 

●大企業・非製造業で「悪い」と答えた割合は17年9月調査19年12月調査まで4%または5%で安定的に推移していたが、20年に入り悪化、20年3月調査で一気に8ポイント悪化し13%に、6月調査では19ポイントも悪化し32%になった。しかし、9月調査27%、12月調査21%、21年3月調査20%、今回6月調査で17%まで低下した。

 

●大企業・非製造業・業況判断DIの「先行き」は+3と「最近」の+1から2ポイントの改善が見込まれている。「悪い」と答えた割合は「先行き」は12%で「最近」の17%から5ポイント減少している。一方、「良い」と答えた割合は「最近」では18%、「先行き」では15%で6ポイントの減少だ。「良い」の減少には。先行きが見えない新型コロナウイルスの感染拡大の影響に対する不安感の強さが垣間見られる。

 

●中小企業・製造業の業況判断DIは今回6月調査で▲7と3月調査の▲13から6ポイントマイナス幅が縮小した。3月調査の「先行き」見通しでは▲12とみていたので、足元の景況感は5ポイント予測よりも良かったという結果になった。

 

 

●一方、中小企業・非製造業の業況判断DIは、20年3月調査で▲1と14年12月調査の旧企業ベースの▲1以来のマイナスがついてしまった。20年6月調査ではさらに悪化し▲26になったが、9月調査▲22、12月調査▲12、21年3月調査▲11、今回6月調査で▲9と4期連続改善した。3月調査時点の「先行き」▲16を7ポイント上回る水準で、予測より良かったということになった。

 

●中小企業・製造業の「先行き」の業況判断は▲6と「最近」▲7から1ポイント改善する見通しである。また、中小企業・非製造業は「先行き」を慎重にみる傾向があり、▲12とこちらは「最近」▲9より3ポイント悪化する見通しである。

 

●全規模・全産業の業況判断DIは、過去最悪の98年9月調査の▲48に近かった09年3月調査の▲46を底に上昇し、東日本大震災による一時的落ち込みなどを挟んで13年9月調査で+2と07年12月以来のプラスになり、以降プラスが続いていたが、20年3月調査で▲4と19年12月調査の+4からマイナスに転じ、6月調査では▲31と2ケタのマイナスになった。しかし、9月調査▲28、12月調査▲15、21年3月調査▲8、今回6月調査で▲3と4期連続で改善した。「先行き」は▲5と2ポイント悪化の見通しだ。持ち直し基調にはあるが、ワクチン接種は加速しているものの変異株の出現でまだ終息が見通せない新型コロナウイルスの動向が先行きの景況感に影を落としている。

 

●雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)では大企業・中堅企業・中小企業と全産業・製造業・非製造業のすべての組み合わせをみると、今回6月調査では大企業・非製造業と中小企業・非製造業の2つの組み合わせで限界的な変化としては過剰感が増した。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置発令の影響が出ていよう。一方、先行き見通しでは変化幅がすべての組み合わせでマイナスと、不足感が拡大している。雇用に関しては、厳しい環境にはあるが、企業の判断では、先行き雇用の過剰感が増しているという状況にはないことがわかる明るい数字になった。

 

●6月調査の20年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲8.3%になった。一方、20年度の中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は▲8.5%になった。新型コロナウイルスの影響で企業が設備投資に慎重になっていた様子が窺われる。一方、21年度の大企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+9.6%、中小企業・全産業の設備投資計画・前年度比は+0.9%の増加である。全規模合計・全産業の設備投資計画・前年度比は+7.1%のしっかりした増加率になっている。

 

●また、GDPの設備投資の概念に近い「ソフトウェア・研究開発を含み土地投資額を除くベースの全規模合計・全産業の設備投資20年度計画・前年度比は▲8.5%だった。一方、21年度全規模合計・全産業の設備投資・前年度比は+9.3%と増加見通しになっている。

 

●「企業の物価見通し」では、全規模合計・全産業でみて、販売価格の見通しでは、1年後が+0.5%と前回3月調査の+0.2%から0.3ポイント上昇した。3年後が+1.1%と前回から0.2ポイント上昇、5年後が+1.7%と前回より0.2ポイント上昇した。また、物価全般の見通しでは、1年後が+0.6%と前回より0.2ポイント上昇、3年後が+0.9%と前回より0.1ポイント上昇、5年後が+1.1%とこちらも前回より0.1ポイント上昇となった。今回の短観の企業の物価見通しは上昇率見通しが全般的に高まるという内容になった。

 

●日銀短観6月調査では、製造業・非製造業と大企業・中堅企業・中小企業の6つの組み合わせ全てで「最近」の業況判断が3月調査から改善した。先行きは新型コロナウイルス感染拡大への不安感から慎重な見方が継続していることを示唆する内容だった。「最近」で「良い」と回答したが、「先行き」は不透明だとみて「さほど良くない」にした人が多かった大企業・製造業など3つの組み合わせで、「先行き」の業況判断が「最近」よりやや悪化した。しかし、6つの組み合わせ全てで「悪い」の割合は低下している。先行きの景況感は悪くはないと言えよう。

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年6月調査 日銀短観』を参照)。

 

(2021年7月1日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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