“一見健康”身内が「100万円超の献金」思わぬ落とし穴
Aさん(32)は、静岡県内の過疎地域に住む祖母(85)のことで悩みの種を持つ。
祖母はとても温厚で身体的には健康、一見平穏な老後を過ごしているかのように見えた。しかし高齢で判断能力が鈍り、じつは裏では新興宗教団体に多額の寄付をしていたことが発覚する。祖父に先立たれ、持ち家に1人暮らし。
最近どうも様子がおかしく、高い数珠や壺を買ったり、十数万円もする高価な椅子も買っていた。
後日、祖母がその宗教団体に少なくとも100万円以上の寄付をしていることが分かった。預金通帳の履歴、そして決め手は仏壇の下にあった「謎の銀箔が張られた板」であった。団体の名前が入っていたことで確信に変わった。後に調べたところ、「その板に名前が入っている=100万円以上の寄付をした」ことを意味することが分かったためだ。
前述した数珠や壺も、その団体と関係があるだろうとAさんは見ている。高い椅子は単に判断能力が鈍った故の代償かもしれないが、その他高齢者が好きな「タンス預金」などでAさんが把握できていない購入歴があるかもしれず、その総額は定かではない。
本人も自分で自分のことができなくなれば、設備のある程度整った高齢者施設に入るつもりでいたが、これ以上貯金を使うと入居資金が足りなくなってしまう…。
Aさんは不安になり、財産セミナーに参加。そこで「家族信託」の存在を知り、司法書士に相談した。
早速、Aさんと本人とともに家族信託の準備を始めた。
①Aさんが祖母の家や車、金銭管理をする。施設入所に関する費用捻出のためであれば、車や家の売却もできる。
②本人死後、残った財産は本人の葬儀・墓の管理、家の取り壊し代に使用する。
②の結論に至った背景として、Aさんの祖母の貯金残高は、施設入所費用をざっくり計算して差し引いた場合には非常に少なくなるか、もしくはほぼ残らないと予想される。また、祖母本人が「残った分はやはり団体に寄付したい」という希望を話し合いの中で拭いきれなかったため、このような内容となった。祖母には「自身の死後、周りに迷惑をかけたくない」という想いもあったことから、②の内容であればと最終的に納得してもらうことができた。
もし本人が合意すれば、「本人の死後、残った財産はA(もしくはAとその家族等)に相続する」という内容にもできる。
預金600万円のうちすべてを専用の口座に移し、Aさんが管理する。祖母が元々保有していた預金口座に入ってくる年金に関しては、祖母がそのまま自由に使用できる。600万円が入った口座から祖母が自由にお金を引き出すことはできない。
身内の判断が鈍り、トラブルが起きる前に対策を施しておくことは重要だ。しかし一番大事なのはやはり「老いた身内を置き去りにしない」ことだ。コロナ禍で益々遠方の身内に会いに行く機会が減り、一見健康そうに見えるからといって「過疎地でほったらかし」などしてはいないだろうか。
「認知症5人に1人」の未来まであと約2年半…。多くの人にとって、今一度考えていただきたい課題である。
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