賃金、資産総額、貯蓄額「何もかもトップ」の東京だが
東京都産業労働局は「大企業については、行政機関や民間研究機関等で各種の調査が実施され、調査結果が公表されているものの、企業数の大半を占める中小企業については、必ずしも十分とはいえない」とし、従業員10人~299人の都内中小企業について賃金の実態を調査しています。
賃金ランキング、資産総額ランキング、貯蓄額ランキングをはじめ「カネ回り」に関しては首位を総なめしている東京都ですが、一部の富裕層や大企業の高給取りが全体値を底上げしていることは間違いありません。実際の働き手の資金繰りはいかほどなのか? 見ていきましょう。
令和5年7月の全常用労働者(※)の平均賃金は、所定時間内賃金が「37万9,774円」、所定時間外賃金が「2万7,300円」、合計で「40万7,074円」となっています(平均年齢43.2歳、平均勤続年数11.2年)。なお労働組合がある企業は、ない企業と比べて所定時間内賃金が「767円」高くなっています。
※ 常用労働者……雇用期間を定めず雇用されている労働者のこと。日雇労働者や季節労働者、雇用期間に定めがあり、契約期間を更新している労働者等は除く。
企業規模別に見ていきましょう。全常用労働者が10人~49人の企業は、所定時間内賃金が「35万8,235円」、所定時間外賃金が「2万4,910円」で、令和4年の年間給与支払額は「519万6,869円」。
50人~99人の企業は、所定時間内賃金が「39万4,798円」、所定時間外賃金が「2万8,668円」で、年間給与は「571万5,674円」。100人~299人の企業は、所定時間内賃金が「39万835円」、所定時間外賃金が「2万8,691円」で、年間給与は「621万6,746円」。一言で中小企業といっても、やはり企業規模別に賃金格差は存在しています。
産業規模別にも見ていきましょう。東京都の所定時間内賃金(通勤手当含む)、最も高額となったのは「金融業・保険業」の58万972円。「学術研究、専門・技術サービス業」51万1,297円、「情報通信業」41万1,565円と続きます。
一方所定時間内賃金の低い産業は「教育、学習支援業(学校教育を除く)」29万5,568円、「宿泊業・飲食サービス業」30万5,574円、「運輸業・郵便業」31万3,595円でした。所定時間外賃金の高い産業をみると「建設業」4万6,247円、「運輸業・郵便業」4万2,818円となっており、長時間勤務の過酷さをうかがわせます。
一方「教育、学習支援業(学校教育を除く)」は所定時間外賃金「1万2,649円」、「宿泊業・飲食サービス業」は「1万6,496円」と所定時間内・外を合わせた賃金も低く、厳しい実態が明らかになっています。
特にコロナ禍、宿泊・飲食サービス業は多くの苦難を強いられました。休業、それに伴う雇止めが相次ぐなか、最低賃金は上昇したものの労働者にとってはいまだ不十分であり、経営者にとっては会社の資金繰りを大きく左右するマターとして、双方の頭を悩ませている現状があります。
なお本データには日雇い労働者や季節労働者の方など、雇用期間に契約がある方は調査対象に含まれていません。平均賃金の高い東京ですが、その濃淡は鮮明です。