成績があまり良くない弟に灘高の勉強法を教えると
実は、その半年後にも、私は似たような経験をしました。
私が東大の理三に合格したのを見て、1学年下の弟がこんな話を持ちかけてきました。
「灘高の勉強法をマスターしたら、自分も東大に合格できるかもしれない。だから教えてほしい」
これにはさすがに驚きました。
弟は、小さいときから身体が弱く、休みがちなため、勉強を教える幼稚園にはほとんどついていけないくらいの状態でした。小学校に入っても、算数がほとんどできず、学校の先生から「特別に支援のある学校に行ったほうがいい」と言われるほどでした。
3年生で公文式の塾に通い始めてから、多少持ち直したものの、私の後に続いてチャレンジした灘中の受験に失敗し、不本意ながら別の中学に進学。そのまま高校まで進級していました。
その高校は、東大合格者が数年に1人出るかどうか、毎年の合格者数では京大はせいぜい1人、大阪大5人、神戸大10人くらいのレベルです。
しかも、その学校で弟がトップクラスならともかく、学年で60~80番程度の成績だといいます。ギリギリ上位3分の1に入っているという感じでしょうか。関西でいえば、「関関同立」のいずれかに引っかかれば御の字といったところです。
さすがの私も、無茶をいうにもほどがあると思いました。しかし、弟の「根拠のない自信」に半ば気圧されるまま、灘高の勉強法を一通り教えることにしたのです。
歴史は「新書を読む」開校以来2人目の文一現役合格!
そこで私は、改めて灘高に伝わる勉強法を体系化してみました。
すると、たしかに灘高の勉強法は、東大合格を目指す理想的なやり方だったことを再確認しました。
まず、弟は昔からずっと数学ができなかったのですが、比較的物覚えがよかったので、解法のパターンを暗記して解くという手法を教えました。
歴史については、教科書を読んで細かい年号や出来事を暗記するだけの方法をやめさせ、新書を何冊か読むという準備をさせました。これは灘高の生徒たちがやっている方法であり、いくつかの教科書レベルのキーワードから、「この時代の貨幣経済の特徴を800字以内で述べよ」というような論述問題への対策としては最適です。
灘高の勉強法を実践した弟は、みるみる実力を伸ばし、驚くことに見事、東大の文一に現役合格を果たしたのです。自分で勉強法を伝授しておきながら、これには私自身が驚きました。
後になって、弟が通う学校で東大文一に現役合格したのは、開校以来2人目だと聞かされました。弟の東大現役合格を目の当たりにして、私は勉強はやり方しだいであるという事実を改めて実感しました。
その後、勉強法に関する本を多数執筆したり、地方の子にもできる通信制の受験指導塾(毎年、地方のそれほど有名でない公立校から東大合格者を何人も出しています)を経営したりするようになったのも、この体験が原点になったのは間違いありません。
和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長