▲トップへ戻る
妻の老後や後継者以外の子に配慮した「自社株」の分割方法

前回に引き続き、「遺言代用信託」で株式の権利を分割する方法を見ていきましょう。今回は、具体的にどのように分割すればいいのかを紹介します。

自社株は「後継者」に多く振り分ける

(前回の続きです)

 

三日後、由井は熊田メッキ工業の社長室に現れた。

 

「こちらが熊田さんの財産について計算した資産分析シートになります」

 

挨拶をすませると、由井はバッグから書類を取り出した。

 

「まず熊田さんの相続財産ですが、預貯金が2000万円、債権が1000万円、ご自宅が1500万円、そして自社株が2億1000万円で、計2億5500万円となっています。この財産の分割について私の方で案をまとめてきました」

 

「ほう、見せていただこう」

 

「まず預貯金ですが、こちらは子供さんたちで分けます。長男500万円、長女500万円、次男1000万円です。そのかわり債権と自宅は奥様が相続します。奥様には独自に2500万円の財産があるので、老後の資金に困ることはないでしょう」

 

「源太郎のところじゃ奧さんのへそくりに相続税が課税されるそうだが、うちは大丈夫なのか?」

 

「はい。熊田さんの奥様は従業員として会社で働き、その給与として受け取っていたお金を貯蓄していたわけですから、すべて奥様の財産と見なされご主人の相続財産には含まれません」

 

「それならいい」

 

「さて問題の自社株ですが、受益権を奧様に9000万円分、長男の雄一さんと長女の恵子さんに3000万円分ずつ、後継者の雄二さんには6000万円というような割合で分けるのが私の提案です」

 

「妻のが多いのはいいが、雄二が他の兄弟の2倍もらうと雄一や恵子が文句を言いそうだ」

 

「雄二さんはこれまで20年以上も熊田メッキで働いて、株式の価値を高め資産を増やすために大きく貢献してきたはずです。その寄与分と考えれば十分妥当な割合だと思いますよ」

 

「そう言われればそうだな」

 

「この分け方ですと相続税は一次相続で2047万円、二次相続で1239万円となります」

 

「一次相続の分は預貯金で賄えるというわけか・・・。二次相続が少し多い気がするが」

 

「奥様独自の財産である2500万円がこの時には課税対象となるためです」

 

「そういうことか。いや、妻の老後や子供たちの気持ちにも配慮した素晴らしい分割案だな」

自分の口で「思い」を伝えることが円満相続につながる

「そう言っていただけると、知恵を絞った甲斐がありました。あとは子供さんたちにこの相続によせた熊田さんの思いをぜひともしっかりとお伝えいただければと思います」

 

「思いか・・・俺は口下手でな」

 

武雄はぼやいた。

 

「雄二とは本音で話せるが、雄一や恵子は頭が良すぎて俺の言うことなど理解してくれない」

 

「そんなことはありませんよ。頭の良い子供さんなのでしょう? 正直に心の内を伝えようと努すれば必ずわかってくれます。この相続を円満に完了するには、実はみなさんに熊田さんの気持ちを理解してもらうことがとても重要なのです」

 

「どういうことだ?」

 

「遺産分割に納得していただけないと、たとえば雄一さんや恵子さんが、相続分である自社株を時価で買い取って欲しいと雄二さんに求めるかもしれません。会社にも雄二さんにもそんな資金はないでしょうから、深刻な事態に陥ることが考えられます」

 

「源太郎にも、同じことを言ったそうだな。円満相続が相続のカギだと」

 

「はい。たくさんの相続を見てきて、結局はそこに行き着いたのです。極端に言うなら節税はおまけのようなものです」

 

由井はニッコリと微笑んでみせた。

 

[図表]没後の遺言代用信託を使った事業承継

株式会社関総研結い相続支援センターアズタックス税理士法人 代表公認会計士・税理士

1948年生まれ。香川大学経済学部卒業後、大阪国税局に入局。等松・青木監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)を経て、1978年関公認会計士事務所を開設。1983年に株式会社関総研を設立、2004年には株式会社関総研財産パートナーズを設立、そして2013年10月大阪証券取引所ビルに相続・資産管理支援専門の「結い相続支援センター」を開設した。日本M&A協会副理事長。

著者紹介

連載「遺言代用信託」で株式の権利を分割する方法

本連載は、2015年2月27日刊行の書籍『家族のトラブルをゼロにする生前の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

家族のトラブルをゼロにする 生前の相続対策

関 博

幻冬舎メディアコンサルティング

平成27年1月、改正相続税法が施行されました。中でも基礎控除の4割縮小により、今まで相続税がかからなかった家族も課税されるケースが増えることが話題となっています。うちの家族は仲がよいから大丈夫、あるいは財産が多くは…

 

税務セミナーのご案内 有料 10,000円 主催:カメハメハ倶楽部

元・東京国税局部長が明かす「海外資産」保有者のための最新税務対策

~金融口座情報の自動的交換に対応した国際的な資産防衛の進め方

講師 杉本俊伸 氏
日時 2018年11月17日(土)
内容

・2018年から始まる金融口座情報の自動的交換とは?

・金融口座情報の自動的交換に対応した国際的資産防衛法

・相続税・法人税・所得税に係る王道の国際的節税法

・税効果抜群!グローバル資産増大法

・国外財産調書から分かる資産家の国際的投資行動とは?

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場
相続・事業承継セミナーのご案内 有料 10,000円 主催:カメハメハ倶楽部

資産5億円以上の方のための元・国税局部長による戦略的「相続税」対策

~もう相続税対策のためにタワーマンションを買ったり、アパートを建てたりする必要はありません

講師 杉本俊伸 氏
日時 2018年12月08日(土)
内容

・備えあれば患えなし!相続税を賢く乗り切る

・被相続人が病気などで意思能力を失う前に相続税対策を行うことが極めて重要!

・相続財産を減らさずに相続税を払う方法とは?

・100%~80%下がる!相続財産評価のマル秘テクニック

・金融資産、不動産、自社株の王道対策

会場 幻冬舎本社ビル内 セミナー会場

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧