「確定申告するのが面倒くさい」「節税したいけど、どうしたらいいか分からない」……、毎年このような声をよく聞く。日本の税制は、納税者自ら確定申告をする「申告納税制度」で、申告内容の一部は納税者の選択に委ねられているのだ。申告相談に携わった元国税専門官が、節税にはどっちが得なのか、プロの税金術を公開する。本連載は小林義崇著『元国税専門官が教える! 確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?』(河出書房新社) より一部を抜粋し、再編集したものです。

口座の残高不足で延滞税には注意が必要

これは大した違いではないように思えますが、資金繰りが日々変動する自営業者にとっては、助かることも少なくないはずです。もし、3月15日までに納税資金を用意できなくとも、4月の口座引き落とし日までに用意できれば、未納にならないので、延滞税がかかることもありません。クレジットカード納付のように手数料もかからないので、気軽に利用できる点も助かります。

 

ただし、振替納税を使うときには注意点もあります。残高不足のリスクです。これは公共料金などの口座引き落としにもいえる問題ですが、指定した口座の残高が不足していれば、当然ながら税額の引き落としはおこなわれません。

 

そうすると、納期限の翌日以降ずっと未納だったのと同じ扱いになり、未納日数に応じた延滞税がかかります。振替納税を利用する際は、こういう事態にならないように、口座の残高をチェックして、他の口座引き落としの状況もあわせて管理することが大切です。

 

もうひとつの注意点は、振替納税の手続きは、税務署単位でおこなうということです。たとえば渋谷区に住んでいる人は、渋谷税務署に振替依頼書を提出します。この人が中野区に引っ越せば、新たに中野税務署に振替依頼書を出さなくてはなりません。

 

よくある勘違いは、確定申告書の様式を見るとわかるのですが、第1表の右下に銀行の口座情報を書く欄があります。ここに引き落とし口座のつもりで記入してしまうと問題です。

 

この欄は振替納税とはまったく関係ありません。還付金がある場合の振込口座を指定する欄ですから、振替納税を希望するときは、この欄に書いても意味がないのです。税務署で確定申告の相談に応じていたころ、この欄に記入すれば、納税の手続きが終わったと勘違いしている人を何度か見たことがあります。

 

本記事は「確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち?」(河出書房新社)の一部を抜粋し、2021年5月現在の法令等に合わせ加筆したものです。法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。

 

小林 義崇
フリーライター 元国税専門官

 

 

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確定申告〈所得・必要経費・控除〉得なのはどっち? 元国税専門官が教える!

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小林 義崇

河出書房新社

クイズ形式で出題。ベスト・チョイスはどっちか? 青色申告or白色申告。開業届を出すor出さない。家族を雇うorパートを雇う。iDeCo or小規模企業共済。郵送で申告or e‐Tax。国税専門官として数多くの申告相談に携わった著者…

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