トイレ付ユニットバスを改修…意外な落とし穴が
【事例】 アパート経営をしています。築10年が経過したアパートですが、長く住んでいる賃借人からトイレの水漏れの相談をされました。これを機にトイレ付ユニットバスから人気のある風呂トイレ別に変更し、最新の設備で水回りのリフォームを300万円かけて行い、「修繕費」としてその年の必要経費に計上し、申告しました。
しかし、間取りや水回りの設備の変更を行っていたことから「資本的支出」であると指摘され、修正申告を余儀なくされてしまいました。
【失敗のポイント】 修繕費と資本的支出の違いをよく確認しておくべきでした。元の状態よりも使用期間を延ばしたり、資産価値を高める修繕費は資本的支出となり、減価償却の対象になります。全額その年の必要経費にはできません。
【解説】 アパート経営を長く続けていると、破損や劣化、老朽化などにより、修繕費用がかかるようになります。例えば、共用部分の電球・蛍光灯の交換、エアコンや水回りの設備の修理・交換、外壁の塗り直し、畳の交換、床の修理・張り替え、間取りの変更……などなど。
これらの支出を全額必要経費にするか、あるいは、資産に計上して毎年の減価償却費とするかは、大家さんにとって大きな問題です。こうした支出については、修繕にかけた費用や目的などによって、「修繕費」と「資本的支出」の2つに分けて考えます。
まず修繕費とは、その固定資産を通常に維持管理、あるいは原状を回復することになる修理や改良に使う費用です。費用は全額をその年の必要経費にできます。
これに対して、資本的支出とは、その固定資産の価値を高める、あるいは、耐久性を増す(使用期間を延長する)ことになる修理や改良に使う費用です。
例えば、避難階段などを物理的に付け加えていたり、用途変更のための改造や模様替えをしているようなケースです。細かい例を挙げれば、取り替えた部品(備品)や修理に使用した材料が以前より質の高いものになっている場合も資本的支出になります。
こうした資本的支出は、全額を必要経費にするのではなく、減価償却資産として毎年償却していきます。修繕費か資本的支出か迷ったときの判断の目安としては、次の条件に当てはまるものは概ね「修繕費」と考えられます。
・1つの修理、改良等の金額が20万円未満のとき
・概ね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良等であるとき
・災害により被害を受けた固定資産の現状回復の費用であるとき
・1つの修理、改良等の金額のうちに資本的支出か修繕費が明らかでない金額がある場合で、その金額が60万円未満のとき
・1つの修理、改良等の金額のうちに資本的支出か修繕費が明らかでない金額がある場合で、その資産の前年末の取得価額の概ね10%以下であるとき
[図表1]を参考に判定してみて、不明なものについては税務署に確認することをお勧めします。
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