今回は、安易な処分が難しい「農地」に対する相続税対策を見ていきます。※本連載は、株式会社フジ総合鑑定の代表取締役・藤宮浩氏と、税理士・髙原誠氏の共著、『日本一前向きな相続対策の本』(現代書林)の中から一部を抜粋し、相続税における様々な特例について見ていきます。

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「生産緑地地区」の指定で、納税猶予の適用を受ける

農地は、食料自給率を維持するため、農地法によって処分が著しく制限されています。一方で、農地も宅地等と同じく不動産ですから、相続税は課税されます。

 

宅地なら、土地を処分して納税することもできますが、農地は農地法の規制により宅地のような安易な処分ができません。そこで、農業を営む限りは、農地にかかる相続税や贈与税の納税を猶予して、農地に課税される相続税の負担を軽減する制度が設けられました。

 

農業を営んでいた人から農地等を相続や遺贈によって取得し、引き継いで農業を営む場合等には、一定の要件のもとに、その取得した農地等の価額に対応する相続税は、納税が猶予されます。なお、納税猶予を適用できる農地が市街化区域内にある場合は、生産緑地地区の指定を受ける必要があります。

 

生産緑地地区とは、市街化区域内にある一定の要件を満たす農地等で、地方自治体により指定を受けた区域のことを指します。良好な都市環境の形成のために、都市部に残る農地の保全を図る目的があります。

 

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生産緑地地区に指定されると、固定資産税が一般農地並みの低い課税となり、相続税の納税猶予の特例を適用できるといったメリットがあります。

農業を「継続しない場合」の対策もしておく

一方、原則として農業を引き継いだ相続人が営農を継続できなくなる一定の事由(死亡・病気・怪我等)がない限り、解除できないというデメリットもあります。

 

生産緑地を所有している場合で、相続後に農業を続ける見込みがない場合は、農地転用(農地以外の用途に変えること)を考慮した対策を行っておくことも重要です。

 

生産緑地は、納税猶予を受けない場合は、宅地並みの高い相続税評価が適用されます。そのため、納税猶予を受けている途中で農業をやめざるを得なくなった場合には、猶予されていた相続税の負担が重くのしかかってくることになります。

 

農業を引き継ぐ方がいないようであれば、あらかじめ相続人が分割しやすいように分筆しておく、売却を想定して境界確定測量をしておく等の対策が必要と思われます。

 

日本一前向きな相続対策の本

日本一前向きな相続対策の本

藤宮 浩・髙原 誠

現代書林

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