2025年には65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症になると言われています。そのため、なるべく家族に迷惑をかけないようにするには、早めに対策をする必要があります。今回は、親が認知症になった場合、預貯金が自由に引き出せなくなる理由を解説します。※本連載は、海老原佐江子氏の著書『家族に迷惑をかけたくないあなたが認知症になる前に準備しておきたいこと』(WAVE出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

子どもが親の口座を管理すると、トラブルになることも

預貯金の引き出しには、原則として本人の意思確認が必要です。しかし認知症になると、子どもなどの家族が本人の金融機関のキャッシュカードを管理することがあります。確かに、本人が認知症であることを金融機関に知られていなければ、代わりにATMでお金を引き出し、本人の生活費や医療費にあてることができてしまいます。

 

しかし定期預金になると、本人の意思確認がもっと厳格になります。例えば、介護施設の契約金を支払うために、ある程度まとまった金額の定期預金を解約して、窓口で振り込むなどの手続きをしたい場合、家族であっても、「本人が窓口に来なくてはダメです」と金融機関からストップがかかることがあります。

 

今後は、一時的に必要なお金が生じた場合は、家族関係が確認できて、入院や介護施設費用の請求書など、お金が必要な理由がわかる書類があれば、家族の引き出しや振り込みに応じてくれるようになるようですが、本人以外の人が継続的に預金の引き出しをすることはできません(2020年3月、一般社団法人全国銀行協会の通達)。

 

また、本人の家族、例えば子どもの一人が親の口座を管理する場合に、その人が不正に親の預金を引き出して自分のために使っているのではないか、と疑う親族との間でトラブルになることがあります。そのため、預貯金を保護すべき金融機関としては、簡単に黙認しようとはしないのです。

 

このような問題が生じるのは、認知症の方だけではありません。判断能力がしっかりしていても、脳梗塞の後遺症や、転倒して骨折したなどの理由で、金融機関の窓口に本人が行けなかったり、自分で委任状に字を書けなかったりする場合には、同じような不都合が起こります。

 

そうなると、せっかく老後の生活のために財産を蓄えていても、自分のために使うことができず、結局、誰かに金銭面で頼らざるを得なくなってしまう、といったことが起こるのです。

 

「それなら、必要な費用を長男に立て替えておいてもらって、私が亡くなったあとの相続で子どもたちが清算してくれればいいのでは」と考える方もいるかもしれません。

 

確かに、それがうまくいけばいいのですが、必ずしもすんなりと事が運ぶとは限りません。なぜなら、相続とは、生前の相続人の間の不公平をなくす制度ではないからです。

 

「寄与分」といって、亡くなった方の財産の維持や増加に特別に貢献した相続人に、ほかの相続人よりも多く財産を取得させる制度はあります。しかし、親の生活費を出してあげたという程度の貢献では、寄与分は認められないかもしれません。

 

こうなると、残された相続人の間で、遺産をめぐってドロドロした争いが繰り広げられる、ということが起こってくるのです。このような事態にならないように、元気なうちから「任意後見契約」、「家族信託」、「遺言」などの準備をしておくと安心です。

 

海老原 佐江子

城南かがやき法律事務所 弁護士

 

 

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