高齢化、人口減少…全国で問題になっている空き家問題。大阪経済法科大学経済学部教授の米山秀隆氏の書籍『限界マンション 次に来る空き家問題』(日本経済新聞出版社)より一部を抜粋・編集し、空き家率の改善策について解説します。

「街を小さくして人を集める」施策は地方都市を救うか

■コンパクトシティ政策の必要性

 

コンパクトシティ政策とは、人口が本格的な減少局面に入る中、成長期に外延部に拡散した市街地を縮小し、中心市街地に居住を誘導することによって、住みやすいまちづくりを行っていこうとするものである。都市機能がコンパクトに集約されれば、高齢化が進む中、高齢者にとっては歩いて暮らせる利便性の高いまちとなる。

 

一方、自治体にとってコンパクトシティ化を図らざるを得ない事情としては、財政状況がますます厳しくなる中、すべての地域のインフラを維持・更新していくのは困難になりつつあるという事情もある。

 

今後、都市をコンパクト化していくという前提で考えると、空き家の中でも利活用できるものは、自ずと選別されていかざるを得ない。すなわち、集約された市街地の中に存在する空き家の利活用は積極的に進めていく必要があり、またそうした地域に問題空き家が存在する場合には、居住環境の維持のため除却を進めていく必要がある。

 

その一方、そうした市街地から外れる地域においては、空き家の利活用や除却の優先度は低くならざるを得ない。また、今後を展望すると、わざわざお金をかけて除却を進めていくという必要性も乏しいということになっていかざるを得ない。

 

それは高齢化と空き家の増加に歯止めをかけることは難しいため、より長い目で考えれば、当該地域の空き家を活用することよりはむしろ、高齢者に中心市街地に移り住んでもらう施策を講じることのほうが良いという考え方が成り立つからである。

 

コンパクトシティの成功事例としてしばしば紹介されるのは富山市である。富山市は、2007年に「第1期中心市街地活性化基本計画」を策定し、国から中心市街地活性化法における認定中心市街地の第1号認定を受け、その後2017年に「第3期計画」を策定し、中心市街地の活性化を図ってきた。

 

公設民営でLRT(新型路面電車)を導入し、環状線化も進めるなど交通の利便性を高めたほか、商業・住宅の複合施設やイベント広場を整備するなどの市街地再開発も推進した。また、まちなか居住を推進するために、共同住宅を建設した事業者・住宅購入者に対し補助金、一定の条件を満たした貨貸住宅に住む場合、家賃補助などの施策を講じた。

 

こうした結果、中心市街地では成果も出始めている。しかし、こうした施策は露骨な中心市街地の優遇で、周辺部から不満の声が上がりやすくなることも事実である。

 

富山市では、中心市街地の面積は市全体の0.4%にすぎないが、固定資産税・都市計画税では22.2%を占めており、中心部に投資しその価値を維持する必要性があるとの強い問題意識から、こうした施策を進めてきた。

 

富山市の施策は、再開発や住宅新築を含め、中心市街地への投資を促すことを重視しており、必ずしも中心市街地の空き家の活用を強く促す施策ではないが、中心市街地に人が集まるようになれば、空き家や空き店舗の活用につながっていくことになる。

 

 

米山 秀隆

大阪経済法科大学経済学部教授

 

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限界マンション 次に来る空き家問題

限界マンション 次に来る空き家問題

米山 秀隆

日本経済新聞出版社

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