離婚はスムーズに進むものばかりではなく、トラブルに発展してしまうことが多いもの。万が一に備えて、日頃から知識を仕入れておくことが重要です。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、「離婚・別居」のアクションを起こす前に、何をすべきなのか解説していきます。

離婚したいが、今の家に住み続けたい…どうするべき?

日々、離婚の相談を受けるなかで、

 

「主人から離婚を突き付けられました。家は用意してもらえるんでしょうか。」

「主人と別れたいです。でも、今の家に住み続けたいのですが……。」

 

こういった相談を(特に女性から)受けるケースがあります。

 

実際、別居や離婚をすると、今までの生活と同じ生活は送れなくなることが多いのです。離婚することによって得られる「精神的な安定」と、離婚することで失うこれまでの「経済水準」。常にこの二つを天秤にかけて、離婚のことを考えていく必要があります。

 

今回は、ご主人の収入に依拠して生活されてきた女性が、離婚する場合に考えるべきことを紹介していきます。

 

考えておくべきことは…(画像はイメージです/PIXTA)
考えておくべきことは…(画像はイメージです/PIXTA)

 

できるだけ「いままでと変わらぬ生活」を保つために

別居・離婚に至る場合において、できる限り生活水準を落としたくないのであれば、

 

①収入を上げる 

②住居費を下げる 

 

このいずれか(あるいは双方)をとることが必要になることが多いです。

 

②は、実家に帰るなどで解決することができますが、もちろん、すべての方が実家に帰る選択肢があるとは限りません。そのときには、やはり、相手からどのくらいの費用をもらえるかはさておき、まずは自分の「今後の収入の確保」が必要になります。

 

別居をするにしても、新しい住まいを借りる敷金・礼金などを支払うお金や、生活費が必要だからです。

配偶者と別居する前に確認しておくべきことは…

ひとたび家を出てしまうと、ふたたび家に戻ることは難しいケースが多いです。そのため、同居している間に、できる限り「夫婦の共有財産」がどの範囲で、いくらあるかを把握しておく必要があるでしょう。

 

配偶者の預貯金が、どの銀行・どの支店にあるか。ほかに株式、不動産などはないか。また、配偶者の収入はどの程度か。把握していない場合、源泉徴収票や給与明細などを見ておく必要があります。

 

自宅がある場合には、売却額がいくらになるか無料査定してもらったり、ローンの残額も把握しておくとよいでしょう。

離婚成立の前に「離婚後の住まい」を確保する

多くの場合、「実家に戻ること」がコストがかからずに合理的です。とはいえ、折り合いの問題もありますし、実家自体に受け入れ余地がない場合もありますから、かならずしも実家に戻れるとは限らないでしょう。

 

公営住宅などを検討される方も多いですが、高倍率のためなかなか入居できないのが実状です。賃貸住宅を探す際には、入居時一時金で相応の金額が必要になるので、前もって準備しておくことが必要になります。

「別居する」とは一体どういうことなのか

住居、収入を確保する見通しが立ったら、次に、別居に向けて準備していきます。

 

離婚の話がまとまってから別居する方が望ましいですが、話し合いが難しく、やむを得ず生活を別々にするところから始めざるを得ない方もいることでしょう。

 

離婚したいが離婚事由が必ずしも十分でないという方は、別居が「婚姻関係破綻の一事情」として勘案されることになりますし、逆に、離婚を思いとどまりたい方にとっては、別居について慎重に行動する必要があります。

 

のちのち「悪意の遺棄」だと言われないように、出ていく理由を端的に置き手紙にして、またその後も相手が困らないようにしておく配慮は最低限必要です。

 

引っ越し業者を呼ぶことができないケースが多いので、少しずつ荷物をまとめて出し、最後の荷物を持って配偶者の不在中に移動される方が多いです。また、引っ越し先を知られたくない場合は、住民票の異動は慎重にしてください。

 

一つとして同じ離婚・同じ別居はありません。お子さん連れの別居の場合は、別途配慮する必要があるので、インターネットの情報に流されず、ぜひ一度ご自身の個別の事情をご相談ください。

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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