代表取締役社長「既婚男性との間で妊娠」で辞任…不倫はどれほど法的・社会的「悪」なのか? (※画像はイメージです/PIXTA)

ある会社の女性代表取締役社長が「既婚男性との交際、および妊娠」を理由に辞任したニュース。既婚男性との交際・妊娠、は役員辞任をすべき事情なのでしょうか。道義的には、法律的には、どうなのでしょうか。諸外国では、クリントン元大統領に始まり、現フランス大統領のマクロン氏に至るまで、不倫その他のスキャンダルは、政治家含め社会的地位とは必ずしも関係していないように思われます。一方、ここ日本では、冒頭のニュースに限らず、女性スキャンダルで男性政治家が失墜することはちらほら。不倫はどれほどの法的、社会的「悪」があるのでしょうか。世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が考察していきます。

 

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不倫は民法的な不法行為、刑事的な違法ではない

ここ日本では、不倫(配偶者のある人と知りながら交際関係になること)は、あるべき婚姻関係の安定を脅かすものとして、民法上の不法行為になります。ただし、当然ながら、刑事的に処罰の対象になるわけではありません。民事的には「違法」でも、刑法上の違法性を伴うものではありません。

 

刑事的に違法な(処罰される)行為は民事的にも違法な行為となり、損害賠償の対象となりえますが、その逆は必ずしもそうはならないのです。不倫は、そのひとつの例といえます。

 

では、不倫があるべき婚姻関係の安定という価値に対して「違法」だとして、別に処罰される行為わけではないのに、そのことはただちに、役員を辞任すべき理由になるのでしょうか。

雇用関係の場合、不倫が原因で懲戒になるか

不倫のご相談で「会社をクビになる(あるいは何等かの処分を受ける)かも……」と心配される方は多いです。

 

しかしながら、実際、社内恋愛があったりして、会社の中がぎくしゃくするときは、多くの会社は、一方、または他方を人事異動(部署異動)して事態を鎮静化させていることが多く、「懲戒」として減給、休職となったり、はたまた解雇となる事例には、ほとんど出合いません。

 

実際には、不倫があったという理由だけで従業員を懲戒解雇とすることは、それだけでは「解雇権濫用」と評価され、解雇無効となる可能性が高いと考えられます。裁判例でも、昭和41年の東京高裁の裁判例で、バス運転手と女性車掌の不倫関係について懲戒解雇処分を相当としたものがあるほかは、以後は、不倫(あるいは社内不倫)自体は「会社の信頼を失墜させた」とか「職場の風紀・秩序を乱した」といえる具体的な事情がないことを理由として、懲戒解雇は重すぎて無効としたものがほとんどです(旭川地裁平成元年12月27日判決、大阪地裁平成28年5月17日判決等)。

 

もっとも、学校における教え子との恋愛であるとかの具体的に職場の風紀と密接に関連するものや、セクハラであるといった、それ自体刑法上の違法性も伴うものについては、懲戒解雇相当と判断されるものがあります。

 

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    世田谷用賀法律事務所 代表 弁護士

    東京都立大学卒業後、新卒で大手弁護士事務所に入社、渉外企業法務を志して弁護士に。「もっと人の人生の近くで仕事がしたい」との思いから、2015年世田谷用賀法律事務所を開所。現在は個人の相続、離婚、不動産を中心に、国際離婚や企業顧問なども多く取り扱う。英語対応可能。東京弁護士会所属。東京都世田谷区所在。 https://setayoga.jp/aboutus.html

    著者紹介

    連載世田谷の家事弁護士が監修!実例では描けない相続&離婚ショートストーリー

    本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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