老後に備えて資産運用を始めようと思っても、色々な金融商品があり過ぎて、何を買えばよいのか迷う方は多いでしょう。本記事では、FPの筆者が考える「買ってはいけない金融商品」の共通点を見ていきます。※本連載は、大江英樹氏の著書『いつからでも始められる 一生お金で困らない人生の過ごしかた』(すばる舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

代表的な「買ってはいけない」金融商品3つ

さて、それでは筆者が考える「買ってはいけない金融商品」と、その理由をお話しましょう。

 

①外貨建て保険

日本が長い間、超低金利になっていることから、少しでも金利の高い外国の債券等で運用することによって、保障を得ながら高利回りを目指そうというのが商品のコンセプトです。

 

ところが、そもそも為替相場というのは短期的には需給関係が中心で動くためにどちらの方向に動くかはなかなか読めませんが、長期的にはその国の通貨の購買力が等しくなるように交換比率が調整されていくものです。端的に言えば円で債券を買ってもドルで買っても長期的にはほとんど変わらないということになります。高い金利だと思っても為替が円高になることで調整されて同じになってしまうのです。

 

加えて短期的には為替相場は大きく変動することもありますので、結果として円高に振れてしまうと、損失が生じることもあります。

 

2018年に外貨建て保険で起きた加入者からの苦情は2500件を超えており、これは統計を取り始めた2012年から4倍以上になっています。

 

その多くは「元本保証だと思っていた」とか「貯蓄だと思っていたのに保険だった」といったもので、どうも商品の内容をきちんと理解されていないことから問題が起きているようです。購入者が勉強不足なのか、販売者が説明不足なのか、恐らくその両方のような気がしますが、いずれにしても保険商品で資産運用を考えるのは大きな間違いです。

 

保険の本質はできるだけ安い保険料で大きな保障を得ることですから、貯蓄や投資の対象として保険は考えないほうが良いと思います。

 

②毎月分配型投資信託

ひと頃ほどではないですが、相変わらず分配型投資信託のニーズは強いようです。資産運用や資産形成を考えた場合、増えたお金を受取らずにそのまま運用に回すことが、結果として複利効果を生み、資産が大きく増えるコツであるにも関わらず、なぜ分配型投資信託が多いのか。主にこれは高齢者のニーズでしょう。

 

定年退職した人はサラリーマンとしての長年の習性から、定期的に給料のようにお金を受取ることを好む傾向があります。特に公的年金は2ヵ月に一回、偶数月にしか支給されないため、それを補う方法として分配型を求めているのです。

 

さらに、その分配金も、運用の結果、増えた分からの分配だけならまだしも、運用成績が不振で全体が下落している時でも元本を取り崩して分配金が支払われています。しかもこうした分配型投資信託というのは手数料も割高です。

 

仮に定期的にお金を受取りたいのであれば、運用資金の一部を預金にしておき、定期引き出しをすれば良いだけで、何も高い手数料の投資信託を買う必然性は全くありません。

 

それに分配金を捻出するために前述のようなオプション取引を使ったりしている場合もあるため、商品によっては過大なリスクを取る仕組みになりがちです。トータルで考えてみても毎月分配型投資信託というのは、あまり筋の良い金融商品とは言えないでしょう。

 

百歩譲って、高齢者であれば高い手数料であろうが、計画的に自分の資産を取り崩す方法として選択することはわからないでもないですが、少なくとも現役世代や若い人達は絶対に買ってはいけない投資信託だと思います。

 

③ファンドラップ

ファンドラップというのは、ある程度まとまった資金を証券会社等の金融機関に預け、投資信託の運用をお任せするサービスです。金融機関は顧客に代わって複数の投資信託を購入して運用します。運用の素人でも任せておけるので安心ということで積極的に顧客に勧められています。

 

そもそも、このサービスの元になっているのは米国で1975年に誕生したラップアカウントです。ラップアカウントは本来富裕層向けのサービスで、最低でも数千万〜数億円が契約条件でしたが、ファンドラップになってからは取り扱い金額が下がり、現在では数百万円でも可能です。

 

この最大の問題点は手数料が極端に高いことです。商品によって差がありますが、投資家が負担する手数料は毎年2〜3%にもなります。これがいかに高いかは通常の投資信託の場合、その多くが手数料0.2%程度になってきていることからもわかります。

 

過去20年間の日経平均の平均リターンは2%程度ですから、下手をすると手数料だけでマイナスになりかねません。別にこんなものを買わなくても自分で投資信託を買えば手数料は10分の1程度で済みます。

 

金融機関はいろいろな理由で勧めてくると思いますが、ファンドラップは間違いなく買ってはいけない金融商品と言えるでしょう。

 

この他にも細かく見ていけば資産運用に適さない商品はたくさんありますが、代表的な商品ということでこの三つを挙げてみました。

 

筆者は証券会社や保険会社に勤務する人、あるいはかつて勤務した人をたくさん知っていますが、面白いことに、そういう人達の中にはこれらの商品を買っている人は一人もいません。どうやらこれらの商品の実態を象徴しているような気がしますね。

 

大江 英樹

株式会社オフィス・リベルタス 代表取締役

1級ファイナンシャルプランニング技能士

 

 

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