「ホテル不足」が深刻な問題となっている日本
分譲マンションには、「気がついたら外国人専用のホテルになっていた」というリスクもある。
日本政府観光局の発表によると、2015年に日本を訪れたインバウンド(海外からの旅行客)は1973万人だった。前年比の147%である。
その結果、足りなくなったのが宿泊施設である。インバウンドはこの5年間で2.3倍という急増ぶりだ。これに対して旅館やホテルなどの宿泊施設はさほど増えていない。とくに旅館は減少傾向が続いてきた。
インバウンドの増加によるホテル不足の実態は深刻だ。東京や大阪、名古屋などの大都市では「ホテルがとれない」状態になっている。3年前なら5000円程度で宿泊できた大都市のビジネスホテルが、ときに一泊3万円にハネ上がっているケースも普通になっている。これは異常事態というべきだろう。
高い収益が得られる「民泊」に利用される可能性が・・・
そうした状況のなか、にわかに脚光を浴びてきたのが「民泊」である。ホテルや旅館ではない普通の住宅に、有料で旅行客を宿泊させる、というものだ。
アメリカに本社があるAirbnbという企業がネット上にホスト(宿泊施設提供者)とゲスト(宿泊利用者)を結びつけるサイトをつくり、世界に広めたことで一気に利用者が増えた。日本でも爆発的に増加しており、メディアでも盛んに取り上げられるようになった。
さらに、投資用に購入したマンションを、Airbnbなどを介して旅行客に1泊単位で貸し出すケースが増えてきた。ホスト側からすると、普通に賃貸に出すよりも民泊で活用したほうが高い収益が得られるのだ。
おおよその基準として、Airbnbが仲介する宿泊施設の一泊の料金は月額賃料の1割である。一カ月のうち20日稼働すれば、賃貸に出したときの2倍の収益が得られる計算になる。
とくに、外国人の区分所有者は管理組合と多少のトラブルになることをあまり気にしないため、高収益な民泊活用に走る傾向にある。現にそうしているケースも少なくないようだ。そうでなくても、日本中で賃貸用住宅は余り気味で、月額賃貸での借り手が不足している。
さらには、Airbnbの業務をすべて代行してくれる企業も続々と誕生している。彼らに任せてしまえば、オーナーは何もせずともAirbnbでの収益を手にすることができる。月額家賃で賃貸運営をおこなうのと、ほとんど変わらない。
この話は次回に続く。