今や外国人にとって東京の不動産購入は普通の投資行動
2013年から始まったアベノミクスにより、円はドルに対して急激に値を下げた。おおよそ1ドルは80円から120円に下がった。
これは外国人から見ると、日本の不動産が従来の3分の2の価格で買えるようになったのと同じだ。ドル換算で120万ドルだったのが80万ドルに値下がりしたのだ。それは安く見えるだろう。
加えて、2008年以降のリーマンショックで世界的な金融緩和がおこなわれた。ドルもユーロも人民元も大量に市場に供給された。その結果、ニューヨークやロンドンの一部、香港、上海、北京、台北などでは不動産バブルと呼んでいい現象が起きていた。
とくに香港や台北、上海では、普通のマンションが平均年収の100倍でも買えない、という珍現象が起きている。もちろん、東京よりも高い。
彼らからすると、東京のマンションは価格が安いうえに、外国人であっても完全な所有権を登記できるという魅力がある。さらに、想定賃料からはじき出す運用利回りは4~5%程度が見込めた。
台北や香港ではせいぜい2%で、1%台も珍しくない。「だったら東京のマンションを買おうよ」普通に考えればそういう投資行動になるし、実際にそうなった。
爆買いでバブル的に高騰する都心不動産だが・・・
2015年は、中華系の外国人が猛烈な勢いで東京のマンションを買い漁った。個人が1戸単位で買う場合もあれば、数百億円という資金をもとに、ビルやマンションを1棟単位で購入する投資もおこなわれた。まさに「爆買い」と呼ぶべき現象だ。
その結果、東京の都心エリアでは、マンションに限らず不動産全般の価格がバブル的に高騰した。異常と言っていいだろう。
ただし、物件の価格は上がるが、賃料は上がらない。前述のとおり、賃貸需要というのは実需である。個人の所得が上がっていないので、払える家賃は限られているのだ。そうなると、運用利回りは下がる。
都心の新築マンションの場合、賃貸で運用した際に得られる年間賃料の合計を購入入価格で割った表面利回りは、いまや3%そこそこの物件も現われている。つまり、34年間ずっと空室にならずに家賃収入が入り続けて、やっと元がとれる。
そういう投資は健全だとは言えない。そもそも、34年間一度も空室にならないことなどあり得ない。また、新築時の家賃水準を34年間も維持できるはずもない。新築マンションはどんどん増えていく。競合環境がよくなるはずはないので、下がるのが常識である。何より、最初に借りてくれる人がスムーズに現れるかどうかも微妙だ。
そうしたリスクを背負いながら、外国人たちは日本のマンションを爆買いした。