前回は、既存物件を「楽器可防音賃貸マンション」に作り変えることが非常に困難な理由を説明しました。今回は、鉄筋コンクリート造の既存物件について転用の可能性を見ていきましょう。

鉄筋コンクリート造でも特別な防音工事が必要に

前回、木造・鉄骨造のマンションを楽器可防音賃貸マンションに作り変えることは非常に困難であると説明しました。それでは、木造・鉄骨造よりもはるかに重い鉄筋コンクリート造のマンションの場合はどうでしょうか。

 

鉄筋コンクリート造は重量があることから、一般に50デシベルの遮音性能を備えています。しかし、この程度の遮音性能ではやはりピアノの音が外に漏れることを防げません。楽器可の物件にリフォームするためには、特別な防音工事を実施することが必要となります。

 

具体的な数字をあげて説明すると、既存の鉄筋コンクリート造のマンションの一室を防音仕様に変更しようとすれば以下のようなコストがかかります。

 

①グランドピアノの演奏に対応した二重防音構造の場合

6畳で約200万〜250万円程度

 

②ドラムの演奏に対応した三重防音構造の場合

6畳で約300万〜350万円程度

 

しかも、①二重防音構造とする場合には、両側の壁、床、天井の厚さが少なくとも100ミリ以上増してしまい、②三重防音構造の場合には、それぞれの厚さが200ミリ以上増すことになります。

 

したがって、既存の天井高が2300ミリのマンションの場合には、①二重防音構造にすれば天井高2100ミリ以下、②三重防音構造にすれば天井高1900ミリ以下の高さしかとることができず、快適な住空間の確保が難しくなります。

 

さらに、6畳の部屋の場合、①二重防音構造であれば5畳、②三重防音構造であれば4畳程度の広さに、有効面積が減少してしまうでしょう。

防音工事は全戸に対して行わなければ効果が不十分

分譲マンションで居室の窓を二重サッシなどに変更するには、管理組合の承認を受けなければならず、勝手に工事を行うことはできません。

 

また、防音工事の結果として、壁や天井、床の重量は大幅に増すことになりますが、このような重量増加に建物が耐えられるか否かをチェックするためには、複雑な構造計算を行わなければなりません。

 

中古の鉄筋コンクリート造の建物に本格的な防音工事を行う際は、新築時の構造計算書が不可欠となりますが、築年数が古い物件の場合には、それがとうに失われている可能性があります。

 

もし構造計算書が見つからなければ、高額な費用をかけて耐震検査等を行わなければならないかもしれません。

 

構造計算や耐震検査で高額な費用がかかるおそれに加えてさらに大きな問題となるのは、1室のみに防音工事を施しても、期待した防音性能を得られない可能性があることです。防音工事は全戸に対して行わなければ効果が不十分となるからです。

本連載は、2016年3月1日刊行の書籍『"楽器可防音マンション経営"で実現する鉄壁の資産防衛』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

"楽器可防音マンション経営"で 実現する鉄壁の資産防衛

"楽器可防音マンション経営"で 実現する鉄壁の資産防衛

大塚 五郎右エ門

幻冬舎メディアコンサルティング

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