「不動産の家賃収入」は人口減少などの不安要素が多い
④の「不動産の家賃収入」といった方法もあります。賃貸収入は、老後の資産作りにはベストとされてきた方法の一つですが、この方法も手放しでは賛成できません。
アパートやマンション経営などは相続税対策の面でも極めて有効でしたが、今後はどうなるか不透明です。現実問題として、関東圏におけるアパート経営は、人口減少などによる需要の変化によって、一部の物件を除き、今後は大きな損失を出す可能性もあります。
1990年代のバブル崩壊によって、地方の不動産価格は20年間で最大10分の1にまで下落しました。この数年は2020年東京五輪などを控えた再開発、マンション建設などで都内の一部の不動産価格は上昇しましたが、それも続くはずがなく、これからの20年で、再び大きな下落が起きる可能性もあります。
マイナス金利で「預貯金や債券の利子」には期待できず
⑤の「預貯金の利子、株式配当」といったインカムゲインによる収入で老後資金を賄う方法です。常識的にはこの方法が一番現実的には思えますが、それぞれメリット、デメリットやリスクがあります。
預貯金の利子で生きる、あるいは債券の配当で生活するという収益確保の方法は、誰もが知る通り、現在では極めて困難な方法と言わざるを得ません。
日本をはじめとする先進国で「マイナス金利」はもはや当たり前と言っていい状況です。債券を持ち続けてもいずれは元本割れの状態で償還されるリスクが高く、もはや預貯金や債券といった金融商品では儲けられない時代に入ったのです。
リーマンショック以来、世界は各国政府が量的緩和や金利引き下げといった「金融緩和」に走り、世界中の金融市場に「お金があまっている状態」が起こり、日本国債や米国国債といった債券は「バブル」が続いています。
債券市場というのは、金利が下がれば下がるほど、債券本体の価格が上昇するため、現在の債券価格は最高値の状態がずっと続いているわけです(書籍発行の2019年当時)。世界中が超低金利のいま、債券価格は世界中で高騰しており、バブル状態に陥っていると言っていいでしょう。
「預貯金の利子や債券の配当」は基本的なところでは当面当てにできないということです。
「不動産の売却」は思い通りの価格で売れない可能性大
残るは⑥の「保有する資産の現金化」です。不動産や絵画などの資産を切り売りしていく方法で、金投資などもこのカテゴリに入るかもしれません。貴金属や絵画、高級時計を収集し、いざという時にはそれを売って食いつないでいく、という方法です。
問題なのは不動産です。日本は持ち家比率が非常に高く、数多くの人が家を持っています。日本経済はかろうじてもっているように見えますが、いずれは不動産価格も暴落する時がやって来るはずです。マイホームを売却して老後資金に回すという方法が取れなくなるかもしれません。
「リバースモーゲージ」といって、持ち家を住んだまま担保にして月々お金を借り入れ、借りた分は死亡後に金融機関が担保物件の家を処分して一括返済する、という方法もあります。もちろん借入利息はつきますが、日常的な支出はこれだけ。
たとえば定年退職後に住宅ローンが残っている場合、これをリバースモーゲージに切り換え、ローン返済額を減額することもできます。契約者が亡くなった場合、残された配偶者が契約が引き継げるケースもあります。
ただ、夫婦ふたりとも100歳まで生きた場合、融資限度額までの資金を生きているうちに使ってしまう可能性もあり、さらに現実的なのは不動産価格の暴落です。いざというとき、思い通りの価格で売れるかどうかは怪しくなります。また、変動金利を採用している契約の場合は、金利が上昇すると月々の金利額が高くなる可能性もあります。
ちなみに、日本の不動産価格はバブル時代に比べて30年かけて、都市部の商業地などを除いてざっと10分の1に暴落しました。かろうじて維持している都心部の不動産価格も今後の展開は見通せません。タワーマンションなど人気の物件は、バブルになっており、いずれは適正な価格まで下落する可能性も高いでしょう。
岩崎 博充
経済ジャーナリスト
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