経済的な貧しさは「健康」や「教育」にも影響する
[図表2]は、主な国の生活水準をさまざまな側面から検討した、国連開発計画の「人間開発報告」(2019年版)からの抜粋です。
コーヒーの消費国であるアメリカや日本の「一人当たり国民総所得」(以下平均所得)を、国別の物価水準の差を取り除いたPPP(購買力平価)でドルに換算すると、それぞれ56,140ドル、40,799ドルであるのに対し、コーヒーの生産国であるブラジルは14,068ドル、コロンビアは12,896ドルと、3~4倍もの格差があります。
世界第2位のコーヒー輸出国であるベトナムでも平均所得はわずか6,220ドルで、さらにケニアは3,052ドル、エチオピアは1,782ドルしかありません。消費国と生産国の間にはこれほど大きな所得格差があるのです。
ブラジルやコロンビアなどの平均余命は…
とはいえ、その国の生活水準は、平均所得だけで測られるものではありません。そこで、健康を表す指標として平均余命も比較してみることにしましょう。例えばブラジルやコロンビアなどの平均余命は75歳を超えているので、所得水準は低くても、健康は維持されていると言えるかもしれません。
一方、ケニア、エチオピアなどのアフリカの国々の平均余命は60歳代に留まり、これらの国々では経済的な貧しさが平均余命の短さに反映されていると考えられます。次に教育について見てみましょう。
現在23歳以上の大人の平均教育年数を見るとブラジルやコロンビア、ケニアでは6〜9年であり、日本の中学校卒業までの年数の教育しか受けていないことになります。エチオピアにいたっては3年にも届いていません。つまり、小学校以下の教育しか受けていない人がほとんどだということになります。
ただし、教育については開発途上国でも近年は改善されてきており、今の子どもたちが今後教育を受ける年数(期待年数)はもっと長くなります。コスタリカやブラジルでは15.4年と日本より長くなっており、その他の多くの国では約12年と、日本の高校卒業までの年数をほぼ達成しています。
エチオピアだけが8.7年と短く、日本の中学校卒業までの年数に留まっていますが、この数字を見る限り中学校も卒業できずに働かなければならないという児童労働の数は減ってきていると予想できます。しかしもちろん、児童労働が完全になくなったわけではありませんので、その点については今後も注視していく必要があるでしょう。
池本 幸生
東京大学東洋文化研究所教授
José.川島 良彰
株式会社ミカフェート 代表取締役社長
山下 加夏
ミカフェート・サステイナブル・マネージメント・アドバイザー
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