離婚はスムーズに進むものばかりではなく、トラブルに発展してしまうことが多いもの。万が一に備えて、日頃から知識を仕入れておくことが重要です。今回は、世田谷用賀法律事務所の代表者、弁護士の水谷江利氏が、「離婚の基礎知識」について解説します。

離婚に伴って発生するのは「慰謝料・養育費」どちらか

離婚のときのお金には、以下の3種類に分類されます。

 

①子どもに関する「養育費」
②財産の分配に関する「財産分与」と「年金分割」
③不倫などがあったときに発生する「慰謝料」
 

 

今回①と③の解説をしたいと思います。

子どもの養育費は、いくら支払おうと当事者の自由だが

日本の法律では、離婚後は配偶者の扶養義務はないとしていますので、別居中は配偶者・子に対する「婚姻費用」、離婚後は配偶者を除き、子に対する「養育費」になります。

 

婚姻費用、養育費とも、従前の生活を基準に、元パートナーがいくら支払おうと当事者の自由です。ただし、それが折り合わないときは、家庭裁判所が出している「婚姻費用・養育費算定表」(東京家庭裁判所HP「養育費・婚姻費用算定表」)を基準にして決められることになります。

 

この算定基準は、低すぎるとの批判を受け、令和元年12月に見直されたばかりです。
 

この表に基づいて計算すると、

 

例)年収夫700万円(給与収入)・妻100万円、3歳・6歳の子が2人の場合
=養育費は2人分で月額10~12万円(1人につき5~6万円)

 

となります。これまでより数万円高い計算になりました。

慰謝料の対象になるのは、どんなときなのか?

「慰謝料」は、どんな離婚でも発生するわけではなく、相手方に不貞行為や暴力などの、不法行為となる行為があった場合に発生します。ですので、離婚理由が「性格の不一致」「価値観の相違」などの理由だけでは、必ずしも慰謝料にはつながらないことがあります。

 

「慰謝料」は、精神的な損害、つまり婚姻関係にある相手から受けた心の傷に対する賠償です。そのため、不貞の慰謝料については、不貞相手にも同様に請求できますが、相手が2人になったからといって、二重取りができるわけではありません。

 

基本的には高くても2~3百万円程度。芸能人の離婚で「慰謝料数億円」のような報道のイメージがありますが、多くの場合、「財産分与」と「慰謝料」を混同したものが多いといえます。

 

なお、不貞による離婚に伴う慰謝料請求権の時効は離婚が成立してから3年間とされていますのでご注意を。

 

 

水谷江利

世田谷用賀法律事務所弁護士

 

 

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本連載は、「世田谷用賀法律事務所」掲載の記事を転載・再編集したものです。

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