「人には優しくしましょう」「相手の気持ちを考えましょう」…おそらく多くの人は、幼いころから家庭や学校でこのような教育を受けてきたのではないでしょうか。しかし、「経済」の観点から考えると、必ずしも「温かい心」だけでは、すべての問題が解決しないことがわかります。ときには「温かい心」ではなく、「冷たい頭脳」による判断が助けになることがあります。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

強欲商人のおかげで、多くの人が生き永らえた話

以下、自分の「冷たい頭脳」を鍛えたいと思う人のために、強欲商人の話を書いておきます。子どもに教えるには少々刺激が強すぎるかもしれず、また、読者のなかにも読んで気分を害する人がいるかもしれませんが、その点どうかご理解ください。

 

江戸時代、コメの不作が予想されると、強欲商人たちはコメを買い占めました。平年の半分しかコメが収穫されないときに、コメを買い占めて平年の3倍の値段で売った、としましょう。

 

人々は、強欲商人を恨みながら、なけなしの貯金を引き出してコメを買いました。値段が3倍ですから、買えても平年の半分です。空腹に耐えて1年間を過ごしたわけですね。

 

では、強欲商人が強欲でなかったら、あるいは「コメの買い占め禁止令」が出ていたら、どんなことが起きていたかを考えてみましょう。

 

コメの値段は例年通りですから、人々は例年通りの量のコメを買って食べ、平和に暮らしたことでしょう。しかし、半年が経過したところで大変なことに気付きます。日本国内にコメがないのです。

 

収穫量が平年の半分なのに、人々が平年通りにコメを食べていたのですから、考えてみれば当然のことですね。結果として、次の収穫期までの半年間に多くの人々が飢え死にをした可能性が高いでしょう。

 

このことは、強欲商人のおかげで多くの人々が飢え死にを免れた、ということを意味しています。「飢饉のときにコメを買い占める強欲商人はケシカラン」と温かい心は考えますが、冷たい頭脳は「彼らのおかげで日本人は生き延びたのだ」と考えるわけです。

 

このことは、多くの人々に知ってほしいと思います。いまでも似たようなことは起こり得ますが、そのときに「政府に買い占め禁止例を出させよう」などという運動が起きると困りますから。

 

なにより政治家の方々には知っておいてほしいですね。そして「冷たい頭脳」を駆使して正しい政策を採ってほしいものです。しばしば「温かい心」が邪魔するでしょうし、次の選挙で票が減る可能性もありますから、「言うは易く、行うは難し」でしょうが(笑)。

 

以上、あえて冷たい頭脳を前面に出しましたが、筆者のことを冷たい人間だと思わないでいただけると幸いです。

 

今回は以上です。なお、このシリーズはわかりやすさを最優先として書いていますので、細かいところについて厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義

経済評論家

 

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