「人には優しく親切に」だけでは回らない、世の中の常
世の中について正しく理解するためには、「温かい心」と「冷たい頭脳」が必要です。
子どもの教育には、「温かい心」をしっかり教える必要があるため、道徳の先生をはじめ、みなで「人には親切に」「相手の気持ちを思いやって」「欲張りはいけません」などと教えるわけですね。
しかし、経済のことを教えようとすると、「冷たい頭脳」についても教えなければなりません。「ライバルの気持ちを考えて、ライバルが嫌がることをしよう」「欲張りなことは悪くないけれど、欲張りすぎると損をするから気をつけて(適度な値上げはいいけれど、値上げしすぎると客が逃げるよ)」といったことも教えます。
今回は、後者の「冷たい頭脳」について考えてみましょう。人々が欲張りだから経済がうまく行っている、という話です。
「コンビニの利便性」と「欲張りな気持ち」の深い関係
読者が空腹のとき、コンビニでパンを買うとしましょう。ところで、なぜコンビニですぐにパンが買えるのでしょうか? コンビニの店長が親切だから? 違います。それは、「コンビニの店長が欲張りだから」なのです。
「パンを仕入れて並べておけば、客が買いに来るから儲かるぞ」と考えるからパンを仕入れておくわけです。もしも店長が欲張りでなかったら、「パンが売り切れているけど、仕入れるのは面倒だから棚がカラでも気にしない」「客が来たけど、応対が面倒だから帰ってもらおう」などと考えるかもしれないですから。
それ以前に、コンビニの社長が欲張りではなかったら、「読者の通勤途上にコンビニを開店させれば儲かるだろうから、開店しよう」などとは考えなかったかもしれませんし、製パン業者が「パンを増産すれば読者が買って儲かるだろうから、増産しよう」などと考えなかったかもしれません。
こう考えると、読者が普段の生活で「コンビニでパンを買う」という何気ない行動が、「人々が欲張りであるおかげでパンが買えている」という話につながっていることに気づくでしょう。
そうです、経済の世界では、欲張りなことは悪いことではないのです。もちろん、「温かい心」も大切ですから、もし災害で困っている地域があれば、製パン業者がパンを贈ってあげる、といったことは推奨されるべきでしょうが。
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