欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は金融政策理事会後の会見では、新たな情報は限定的でした。ECBは前回の理事会でPEPPの「次の四半期」における購入加速を決定したばかりという面はあると思われます。ただ、ユーロ圏には、どちらの方向に行くのか現状では判断しがたい要因があり、様子見が必要なのかもしれません。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

>>>12/10(火)LIVE配信

欧州中央銀行:金融政策は市場予想通り据置で様子見姿勢

欧州中央銀行(ECB)は2021年4月22日に金融政策理事会の結果を公表し、新型コロナウイルス危機対応の政策措置を据え置き、金融緩和の継続を表明しました。


ECBは新型コロナ対策として資産購入の特別枠(PEPP)を1兆8500億ユーロ(約240兆円)に維持し、少なくとも22年3月まで継続することも据え置いています(図表1参照)。

 

週次、期間:2020年4月3日~2021年4月16日、マイナスは償還のみの週 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]ECBの資産購入(PEPP)の純購入額の推移 週次、期間:2020年4月3日~2021年4月16日、マイナスは償還のみの週
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

また今回の理事会では、前回(3月理事会)で決定した、債券購入ペースをかなり速いテンポで進めることを繰り返し述べています。なお、主要政策金利は0%、銀行が中央銀行に余剰資金を預ける金利をマイナス0.5%に据え置きました。

どこに注目すべきか:PEPP、購入加速、ユーロ圏PMI、ワクチン接種

欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は金融政策理事会後の会見では、新たな情報は限定的でした。ECBは前回の理事会でPEPPの「次の四半期」における購入加速を決定したばかりという面はあると思われます。ただ、ユーロ圏には、どちらの方向に行くのか現状では判断しがたい要因があり、様子見が必要なのかもしれません。

 

今回の会見で質問が多かったのはPEPPの購入ペースについてでした。ラガルド総裁は1~2月を大幅に上回るペースの資産買入れを4~6月期に継続する方針であることを改めて表明しました。ただ、PEPPの週次データでネットの購入額を見ると目立った変化は見られません(図表1参照)。4月の第1週がイースターであったことは割り引く必要があるとしても購入額の増加は限定的のように見えます。

 

そもそもPEPPの購入枠は現段階で1兆8500億ユーロと変わらず、購入の期間も定められている中で「購入ペースを加速させる」といっても、購入額の拡大はそもそも限定的にならざるを得ない気がします。本格的に金融緩和が必要であるならば、購入枠の拡大などが必要かと思われます。

 

もっとも、前回の理事会の頃は米国の長期金利上昇に伴い、ユーロ圏の長期金利も小幅ながら上昇していました。この経済状況に見合わないユーロ圏の金利上昇をPEPP購入加速発言がある程度抑制した可能性はあります。

 

ラガルド総裁はPEPPの資産購入について6月以降の方針は議論されず、今後を決めるのは時期尚早と述べています。これはユーロ圏にはどちらの方向に向かうか判断を待つ必要がある要因が多いからと思われます。例えば、会見でラガルド総裁が引用したユーロ圏のサービス業購買担当者景気指数(PMI)は3月が49.6と、新型コロナの影響で、景気判断の分かれ目である50を下回っています(図表2参照)。

 

月次、期間:2018年4月~2021年3月 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]ユーロ圏(製造業、サービス業、総合)PMIの推移 月次、期間:2018年4月~2021年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

しかし製造業PMIは堅調で、2極化が見られます。ユーロ圏景気を期間別に見ても、1-3月期はマイナス成長の可能性があると見られますが、ワクチン接種拡大が想定される4-6月期については回復の可能性も示唆しています。過去を振り返ればPEPPの購入ペース加速は妥当で、当四半期の増額は決めたものの、前を向いて今後を見渡せば方向感が定まらないことが多いと思われます。PEPPの購入ペースはデータ次第と説明したのも今後の様子見の必要性を示唆したものと思われます。

 

ECBの次回の6月の理事会では経済予測などの公表と共に、資産購入の今後の方針が明確になると想定しています。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ECB、本当に加速したのか』を参照)。

 

(2021年4月23日)

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社

運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

日本経済の行方、米国株式市場、新NISA、オルタナティブ投資…
圧倒的知識で各専門家が解説!カメハメハ倶楽部の資産運用セミナー

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【11/19開催】相続税申告後、
約1割の人が「税務調査」を経験?!
調査の実態と“申告漏れ”を
指摘されないためのポイント

 

【11/19開催】スモールビジネスの
オーナー経営者・リモートワーカー・
フリーランス向け「海外移住+海外法人」の
活用でできる「最強の節税術」

 

【11/23開催】ABBA案件の
成功体験から投資戦略も解説
世界の有名アーティスト
「音楽著作権」へのパッション投資とは

 

【11/24開催】事業譲渡「失敗」の法則
―M&A仲介会社に任せてはいけない理由

 

【11/28開催】地主の方必見!
相続税の「払い過ぎ」を
回避する不動産の評価術

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧