今回は、経営危機への「予兆」といえる社長の行動について見ていきます。※本連載は、株式会社アセットアシストコンサルタントのCEO兼統括コンサルタントを務める大森雅美氏の著書、『銀行から融資を受ける前に読む』(旬報社)の中から一部を抜粋し、中小企業経営者が自社の問題点をいち早く察知し、スムーズな資金繰りと堅実な事業経営を実現するためのポイントを紹介します。

「融資を申し込もうと思ったとき」が最初のシグナル!?

ここまでは、早期治療というか、危機の入り口にある会社が症状を悪化させない方法を紹介してきたのですが、では、もっと前、予防するにはどうするか。「こんな兆候が出てきたら風邪に注意」みたいな、危機の兆候、赤信号の前の黄信号の状況とはどのような状況でしょうか。

 

原因もないのに、いきなり重病になることがないように、突然、明日から重大な危機がやってくるわけではないのです。細かい分析などしなくても、なんとなく〝兆し〟が漂うものです。

 

「会社にこんな兆候が現われたら要注意!」の一つ目は、支払い資金が足りないから融資を申し込もうと思ったときです。これはごく当たり前というか、中小企業の社長たちが普通にやってることのように思うでしょう。

 

よくよく考えてみてください。それがシグナルです。当面ちょっと足りないから貸してと銀行に行くこと自体がシグナルです。

 

銀行からお金を借りること自体が悪いのではなくて、問題は、お金を借りる動機、理由です。

 

タイミングよく事業を拡大するとか、ビジネスチャンスを逃さないための、前向きな借金はよいことです。返済計画も具体的に提示できるでしょう。でも、資金繰りが厳しくて、ここで借りてしのげれば、ゆくゆくなんとかなるだろうと思って借りに行くというのは、危機へのシグナルです。

銀行には融資の依頼より「支払延期」の申し出をすべき

運転資金の当面の不足を埋めるような借り方をしていると、クセになって繰り返します。奇跡的に売上げが上がる、制度として自社の仕様やサービスを受ける必要性がすべての会社に出てきたといったことがない限り、その借入の返済計画は具体的にならないでしょう。

 

銀行から借りたいなと思ったら、今、融資を受けたら、本当に返すことができるような会社の状況なのか、ひょっとしたら、ずっと慢性赤字の体質になっていて、ただカンフル剤として借りようとしているのか、経営を見つめなおすきっかけにしたいですね。

 

支払いを止めるという選択肢は、もうこの段階で使うべきなのです。支払いを止めるということは、融資を受けるのと同じ効果だということを知ってください。

 

だから私は、「借りに行くくらいなら止めなさい」と言います。

 

100万円融資を受けて、そのお金をそのまま取引先に支払う。で、その100万円はあとで銀行に返すんですね。会社からすれば、お金の出るタイミングを遅くしただけです。

 

だったら、直に取引先にお願いして支払いを待ってもらえば、同じことです。一ヵ月待ってもらえば、一ヵ月の短期融資を受けたのと同じ効果です。そういう資金繰りの頭をもちましょう。

 

それに融資を頼みに銀行に行くと、怖いワナが待っています。当面は100万円で足りるのに、銀行は、「まだ貸出枠があるから1000万円まで融資できますよ。返済方法は、7年支払いで組んでみましょう」とか、「期日がきたら折り返しする短期融資にしましょう」などと提案してきます。

 

一見、月々の返済は少額なので、何も問題ないように感じます。それに、お金がたくさん手元に合ったほうがよいと思ってしまう。そうこうしているうちに、借入金が膨れあがり、返済が重くなる。

 

自分の会社が、どのくらい払える力があるかも判断せずに借りてしまえば、赤字体質の会社ならその900万円がなくなったら返せなくなるのは当たり前ですよね。

銀行から融資を受ける前に読む

銀行から融資を受ける前に読む

大森 雅美

旬報社

事業が難しい状況になれば、誰でも憂鬱でうなだれてしまうものです。ですが、ここで差が出ます。この本なら、うなだれずに、顔をあげて前に進む心構えと考え方を持てるでしょう。 日常的なことから、いざという時に役立つ知識…

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