オーストラリアとニュージーランド(ANZ)のM&A事業者の多くは、自社や業界全体のM&Aプロセスにおけるデジタル化の成熟度、テクノロジーの洗練度や高度化を「中レベル」と評価していますが、「実務はすでに高レベル」との回答の割合はアジア太平洋地域(APAC)に比較して低いという、特徴的な調査結果が出ました。ANZの自社内のデジタル化を阻むものは何か、分析します。※本記事は、Datasite日本責任者・清水洋一郎氏の書き下ろしです。

豪州のM&A活動復調の背景に、経済回復への期待感

ほかの市場と同じようにオーストラリアのM&A活動もここ数ヵ月で盛り返しており、取引数も2021年を全体でみれば堅調に推移すると見られています。そうした動きを後押しする主な理由には、新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの接種計画や魅力的な低金利融資、資金力のある企業・PE企業に支えられた力強い経済回復への期待感が含まれます。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

これは取引意欲の復活であり、オーストラリアの法律事務所「Gilbert + Tobin」のコーポレートアドバイザリーグループのパートナー兼共同代表のニール・パサック氏によれば、鉱業や天然資源などの業種、また産業全般、さらにはテック系企業まで、あらゆるセクターで見られる傾向だそうです。

 

より具体的な分野、特にM&A業界におけるアドバイスとして、「Gilbert + Tobin」のコーポレートアドバイザリーグループのパートナー兼共同代表であるコスタ・コンドレオン氏は、「デジタルトランスフォーメーションだが、特にAIの周辺で、変化は私たちが期待しているほどのスピードではない」とも述べています。

最新テクノロジーへの投資・活用は「当事者以外」にも

当事者だけが、投資やM&Aのプロセスにおいて最新テクノロジーに投資し、またそれを利用する必要があるわけではありません。例えば、規模の大きな世界的PE企業は、そうした領域に大きな投資を行うことで効率が上がり、ライバル企業から競争優位性を得られるでしょう。

 

地元市場を専門とする小規模なPE企業の多くにとって、最新テクノロジーへの投資や利用はそれほど必要ないでしょう。また、大手の同業者に匹敵するようなテクノロジー投資予算を確保することも難しいでしょう。ニュージーランドで最も歴史あるPE企業であるPencarrowも、そうした例にあたります。

 

しかしながら、Pencarrowの執行役員であるナイジェル・ビンガム氏は、将来的に、Pencarrowが自社の投資プロセスにおいてより新しいテクノロジーに投資し、またそれを利用すると考えています。その一部は、規模の大きい世界的PE企業と同程度になるかもしれません。その理由は、スケールの上位過程で発展した手法や経験が、時間とともにスケールの端々へと伝わる傾向があるからです。

最も時間を要するフェーズを、テクノロジーが強化する

今後5年間で、ビッグデータやAI、機械学習、ブロックチェーンといったテクノロジーが、M&Aプロセス(およびその特定の領域)における変革に大きな影響を与える可能性があると、多くのANZのM&A事業者は考えています。

 

例えば、ANZの事業者は、新たなテクノロジーやデジタル化が、取引準備やソーシング、デューデリといった、最も時間を要するフェーズの強化をもたらすことでしょう。

 

実際のところ、ほとんどのANZの事業者は、今後5年間で、テクノロジーが査定プロセスの分析能力や安全性を向上させると期待しています。具体的には、AIや仮想データルームの一部としての機械学習技術、より専門性の高いデューデリチームの整備などにより、デューデリプロセスも加速するでしょう。

 

また、アナリティクスやレポーティング、データ管理、コミュニケーション、シナリオ分析においてもテクノロジーが貢献すると予想しています。

 

 

清水 洋一郎
Datasite 日本責任者

 

 

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