後継者不在の会社が6割以上となった今、社長の相続が問題になるケースが増えています。今回は、実際に寄せられた相談をもとに、一般社団法人相続終活専門協会理事・貞方大輔氏が解説します。

「私が社長になる」古参社員の大暴走

<登場人物>

被相続人 堺社長64歳

相続人 妻60歳、長女36歳、次女31歳

従業員 福島さん女性61歳

 

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東京の下町の工場街で小さな会社を経営していた堺社長が2年間の闘病の末、亡くなりました。

 

堺社長には奥様と2人の娘さんがいます。小さな会社で山あり谷ありの人生でしたが、堺社長は会社と数名の従業員を長年にわたり守り抜いてきました。

 

堺社長の奥様はもともとお嬢様。仕事にはまったく関わっておらず、堺社長自身も家庭では仕事の話は一切しません。よって奥様も2人の娘さんも、会社に関わったことがないため事業を承継する意思はありません。堺社長の奥様は、漠然と社長の死を機に「会社をたたんでしまおう…」と考えていた矢先の出来事でした。

 

四十九日が終わり、一息ついているときに従業員のなかで最古参である福島さんが社長の奥様の自宅にやって来て、こういいだしたのです。

 

「2ヵ月も会社を放置してあなたは一体何を考えているんですか!」「もう待ってられないから私が社長の意思を継いで、社長になります。ここに書類があるので印鑑を押してください!」

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

 

生前、堺社長がまだ闘病生活で入院しているとき、奥様はお見舞いにきた福島さんと何度か顔を合わせたことがありました。

 

「背が小さく目立たない女性だな」くらいにしか思わず、奥様的にはとくに印象がなかった福島さん。そんな福島さんが急に会社を継ぐといいだしたのです。奥様は体調不良を理由に態度保留で、その場を何とかやり過ごすのが精いっぱいでした…。

 

通常、社長に相続が発生した場合、従業員が数十名以上いるような会社は標準化されているので社長の死後、しばらくは何とかなりますし、場合によっては奥様が継いでも何とかまわります。しかし、従業員数名の会社ではそうはいきません。通常であれば会社をたたむことを選択される方が多いですが、それはそれで簡単に閉鎖できるものでもありません。

 

それでは、社長が亡くなったとき、どんなことが問題になるのでしょうか。

 

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本連載に記載されているデータおよび各種制度の情報はいずれも執筆時点のものであり(2021年4月)、今後変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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