夫急逝で年金激減!「毎月の支出は変わらないのに…」
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【事例① Gさん(60代・女性)】
夫が進行がんで急逝しました。長くないことを知ってから、「私一人になって、経済的に大丈夫だろうか?」という不安が常にありました。不動産のことも蓄えのことも夫に任せきっていたんです。
余命宣告の後で、お金のことを夫に聞いておいたほうがいいと思ったのですが、「死んだ後の話」をするようでためらいました。
でも、元気なうちにいろいろ聞いておけばよかった。夫婦合わせて22万円ほどあった年金は大幅に減りました。支出はそれほど変わらないのに。これから、やっていけるのでしょうか。
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当然ですが、夫婦の一方が亡くなると、年金は一人分に。図表1は現役時代の働き方によって、どのように年金額が推移するかの例です。
場合によっては、一気に半減するケースも。「こんなに少ないの?」と驚く人もいます。Gさんは夫の扶養になっていたので、夫の死後、世帯年金は月22万円ほどから13.2万円ほどになりました。
厳しくなるからこそ、自身の老後の生活設計を行うことは不可欠です。家計調査によると、高齢夫婦の総支出(月)は約27万円なのに対し、一人暮らしでは約16万円です。一気に赤字になる可能性があります。
「一人になった場合の年金額」をあらかじめ知る方法
できれば夫婦が元気なうちから、一人になった場合の年金額の目安を知っておきたいものです。日本年金機構の年金相談にコンタクトすれば、概算を教えてもらうことができます。
普段家計簿をつけていない人でも、1ヵ月だけでもつけることによって、支出をイメージできます。3ヵ月ほどつけると、月々の収支が見えてきます。Gさんの場合は、夫の相続手続きの過程で、預貯金や不動産など資産の全体像が分かるはずです。
配偶者が亡くなっても、自分の生活は続きます。100歳まで生きると考えて、老後資金をプランしたいものです(自分で考えることが難しい場合、ファイナンシャルプランナーに相談するのも一案です。日本FP協会のウェブサイトには「相談できるFP」を探せるページがあるので参考に)。
配偶者亡き後、姻族と関わりたくない…死後離婚で解決
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【事例② Iさん(60代・女性)】
夫ががんで亡くなりました。夫婦関係は良好でしたが、夫には素行が悪くてお金にだらしない弟がいて、夫は何かと尻ぬぐいをさせられ迷惑していました。夫ががんになったのも、義弟が原因の心労のせいだと思っています。
葬儀が終わって食事をしていたときに、義弟に「義姉さん、これからもよろしく」と言われましたが、もう関わりたくありません。
考え抜いた末、自分の身を守るために「死後離婚」に踏み切ることを決めました。
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離婚をする場合は、配偶者とともにその親族との関係も断つことができます。しかし、夫婦の一方が死亡する「死別」の場合には、相手の親族との関係は終了しません。死別した配偶者の親は義親であり、兄弟姉妹は義きょうだいとして関係が続きます。
例えば、配偶者の生前、その親の介護や経済的支援をしてきたとします。配偶者の死亡後、「やめたい」と思うことがあるかもしれません。しかし、関係性に変わりがないと、「介護をやめます」とは言いにくいものです。
そんなときに使える手段が「死後離婚」です。この言葉自体は造語で、実際は死後に「姻族関係終了届」という書類を役所に提出します。死亡した配偶者側の親族との姻族関係解消の意思を具体的に示す届け出です。
ただし、わが子と姻族の親戚関係は継続
姻族関係終了届を提出することによるデメリットは、少ないと思います。配偶者の遺族年金を受給する権利も失われないのでご心配なく。
一つ懸念があるとすれば…。Iさんのケースで言うと、提出によってIさんと義弟の親族関係は終了しますが、Iさんの子と義弟らとの関係は継続するという点です(図表2)。Iさんが関係を断ったことで、義弟が次は子に接近する可能性も…。このあたりの事情を、子としっかり共有しておくことが大切です。
もし子が義弟に対して毅然とした態度を取れないと、負担はIさんから子に移行するだけ。また、子が事情を知らないと、「死後離婚」という響きに、Iさんに対して“薄情者”という印象を抱くかもしれません。
太田 差惠子
離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ 理事長
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