「寝たきり」の分かれ目…こんな症状が出たら即病院
**************
【事例① Cさん(60代・女性)】
夫と二人暮らしです。先日、午後10時を回った頃に、風呂場から出た夫が激しいめまいに襲われ、ベッドに倒れ込みました。私は「救急車を呼ぼう」と提案しましたが、夫が「楽になったから」と言うので、一旦、様子を見ることに。
ところが翌朝、夫はまったく身体を動かすことができなくなっていました。救急搬送されると、脳梗塞と判明。倒れてから12時間以上経過しており、重篤化してしまいました。脳梗塞の治療は時間との戦いです。駆けつけた長男は「せめて僕に知らせてくれていたら」と悔しがりました。
**************
多くの人が「できれば寝たきりは避けたい」と考えているのではないでしょうか。子どもの立場からも同様だと思います。
寝たきりの原因第1位は「脳卒中」です【図表】。「手足」「顔」「言葉」に異変があらわれたら危険な兆候。
後遺症を最小限に抑えたいなら、直ちに病院へ行く必要があります。発作から数分で脳細胞の壊死が始まるからです。発症から4時間半以内に「血栓溶解療法」という治療を開始できれば、後遺症のない状態になる可能性が高まりますが、どこの医療機関でもできる治療ではないので、朝まで様子を見ている場合ではありません。
**************
【脳卒中の典型的な初期症状】
●片方の手足が動かない、しびれる
●顔の半分が動かなくなる、しびれる
●ろれつが回らない、うまく言葉を発することができない
●頭痛、めまい、舌のもつれ、手足のしびれなどの前ぶれ症状も
⇒症状があらわれるのは突然。「手足」「顔」「言葉」に異変を感じたら「様子見」せずにすぐに救急車を!
**************
救急車を呼ぶべき?迷う前に「医療情報ネット」で検索
深夜に救急車のけたたましいサイレン音が響くのは「ご近所の手前…」と考えがちです。実際、救急搬送を依頼するときに「サイレンを鳴らさずに来てください」と頼む人は多いようですが、緊急自動車の運転中にサイレンを鳴らし、赤色の警光灯をつけることは法律で定められています。
とはいえ、救急車を呼びたくないからと自家用車やタクシーで病院に行くと、診療までに時間がかかることもあります。
救急車を呼ぶべきか迷ったら、地域によっては「救急相談窓口」が設けられているので活用しましょう。また、各都道府県で医療機関の適切な選択を支援することを目的に「医療情報ネット」を作成しています。倒れてからでは調べるゆとりはないので、今すぐ「住んでいる都道府県+医療情報ネット」と検索してみましょう。
一切家事をしない夫…妻の緊急入院で「困った」
**************
【事例② Hさん(80代・男性)】
妻が緊急入院しました。下着やパジャマを病院に持っていかなければならないのですが、これまで家のことは妻に任せきっていました。何がどこにあるのか、どうすればいいのか分からず、別居する長女にSOSしたところ、必要な物をそろえてくれて本当に助かりました。
当面の家事は私がやることになりますが、妻がこだわって使っていた二層式の洗濯機や多機能オーブンレンジは使いづらく…。長女のすすめもあって、全自動洗濯機やシンプルな電子レンジに買い替えました。
**************
配偶者が突然入院すると、困ることがあります。特に夫婦二人暮らしの場合、妻の入院で「家事」に支障が生じるおそれはないでしょうか。なんでもかんでも子どもに頼ることはできません。
家族の人数が多い時期に使っていた炊飯器や電子レンジ、洗濯機などの家電は、一人や二人暮らしでは使いづらいことがあります。こだわりから二層式洗濯機を愛用する人もいますが、配偶者に操作が難しいなら買い替えどきかもしれません。
家事に限らず、老親の介護、ペットの世話など、自分に何かあっても継続必須のことは、日頃から夫婦双方ができるようにしておきましょう。
入院中の食事やトイレの世話は、原則「病院側の仕事」
病院の立地や交通手段にもよりますが、毎日朝から晩まで付き添うことを自分自身に課すのはやめましょう。病床の配偶者に寄り添うことは大切ですが、ずっと病室にいると疲れがたまります。
また、いつも病室にいると看護師から食事やトイレの世話を委ねられることもありますが、それが「役割」となると厳しいものです。
ただし、次のようなときは夜間を含めた付き添いを求められるケースも。
**************
【病院から夜間も含めた付き添いを求められるのは?】
●危篤など容態が重篤な場合
●認知症などにより、暴れたり騒いだりする場合
●本人が管を抜くなど治療を妨げる場合
●容態の急変が考えられる場合
⇒原則、食事やトイレの世話は入院費用に含まれており、家族の「仕事」ではない。共倒れしないように、無理な付き添いはNG!
**************
昔と違って付添婦をお願いすることはできないので、家政婦さんを「家族」と偽って依頼する人もいます。また、見ていないと点滴を自分で抜いてしまうなど治療に支障がある場合、「身体拘束への同意書」を求められることがあります。正解はありませんが、仕方のないことも…。
子どもにも「毎日の見舞い」を強要するのはNGです。それぞれのできる範囲を心がけることが、共倒れしないコツです。
太田 差惠子
介護・暮らしジャーナリスト
離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ 理事長
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】