「証明型 or 習得型?」お子さんのマインドセット診断
●子どもは「決定論・証明型」になりやすい
「決定論・証明型」の子と、「成長論・習得型」の子が言いそうなセリフ、取りそうな行動を生徒たちに具体的に考えてもらい、表にまとめたので参考にしてください。程度の差こそあれ、どの子も「決定論・証明型」のセリフを言いがちなものです。お子さんの日頃の発言はどちらのタイプが多いか、振り返ってみましょう。
生徒たちを見ると、「いつでも決定論・証明型の生徒」「いつでも成長論・習得型の生徒」という子もいましたが、多かったのは「得意科目では成長論・習得型で、苦手科目では決定論・証明型」という子です。「今、決定論・証明型の行動をしていなかったかな?」と問いかけると、ハッと気づいてくれますよ。
さて、ドゥエックの実験から、「周囲からの声かけによってマインドセットが決まる」とお伝えしました。でも、お子さんが決定論・証明型になったとしても自分を責めないでください。子どもの周りには親だけでなく、多くの大人や友達がいます。一つひとつ見れば親から受ける影響のほうが大きいでしょうが、トータルでは周囲から受ける影響のほうがより大きい、というのが現在の子どもの発達に関する心理学研究の結論です。
また、そもそも子どもは決定論・証明型寄りになりやすいものです。子どもには「今・ここ」を超えた視野を持つのは難しいことです。「結果」は「今・ここ」だけで見えますが、「成長」は見えません。「成長」を見るには、昔の自分をイメージする必要があるからです。そのため、子どもは決定論・証明型になりやすいのです。
決定論・証明型は他者比較です。他人は「今・ここ」で見えるので簡単に比べられますよね。一方の成長論・習得型は自己比較です。昔の自分は「今・ここ」にいないので、簡単には比べられません。データを残して振り返らないと比較できないわけです。ですから、私たち大人が決定論・証明型寄りになりがちな子どものマインドセットを、成長論・習得型に導いてあげる必要があるのです。
実際、こんなことがありました。あるクラスの生徒たちが、模試の結果が返ってきて全員沈んでいました。偏差値が全員40台で、50に届いている子が1人もいない。「私たちバカだから…」という負の空気が漂っていました。そこで、クラス全員について過去の成績を確認してみました。すると、なんと全員が自己ベストを更新していました。スタート時はもっと低く、そこからここまで上がってきたのです。しかし、どの生徒もクラスの友達と比べるばかりで、自己ベストであることに気づいていませんでした。
決定論・証明型のマインドセットは、結局のところ学習に向かうモチベーションとして良いものではありません。「クラスで一番の生徒」など一握りの勝者は気分よく過ごせますが、それだって危ういものです。子どもが自分の才能よりも努力に注目し、自分を他者比較より自己比較で評価できるよう大人が手伝っていきましょう。
●お子さんは「決定論・証明型」「成長論・習得型」のどっち?
最後に、お子さんの現在のマインドセットが、決定論・証明型か、成長論・習得型かを試す心理テストを用意してみました。それぞれに「1:まったくそうは思わない/当てはまらない」「2:どちらかと言えばそうは思わない/当てはまらない」「3:どちらとも言えない」「4:どちらかと言えばそう思う/当てはまる」「5:とてもそう思う/当てはまる」の5段階でスコアをつけて、合計点を出してみてください。決定論・証明型と成長論・習得型のどちらが高いかで、お子さんのマインドセットがだいたいわかりますよ。
1 (証明) 学校や塾のテストで、人よりも良い成績を収めることが大事だと思う
2 (習得) 自分の間違いを指摘してくれる友人はありがたい
3 (習得) 間違えたときのテストの答案を後日に見返すことがある
4 (証明) 友達や家族・先生に賢い子だと思われたい
5 (証明) 解けた問題があったら、解けたことを周りにアピールしたい
6 (習得) 友達に、間違えた問題について質問することがある
7 (習得) 正解していても、自分と違う解き方も聞いて参考にしている
8 (証明) 間違えた問題の答案用紙を先生に見せたくない
9 (証明) 人からほめられると、いい気分になる
10 (証明) テストのあとは、他の子の点数を気にして不安になったり安心したりする
11 (習得) できなかった問題について、必ず解き直しを行っている
12 (習得) 塾や学校の先輩が受験に合格したとき、「どこに合格したか」よりも「どういう勉強をしていたか」が気になる
なお、どう考えても日頃の発言や行動を見ていると決定論・証明型っぽい子が、このテストでは成長論・習得型のほうが高いという結果になることもあります。それは、「理屈ではそう考えたほうがいい」と理解してはいるけれど、行動がともなっていないということですね。そういう場合には、わかっている分だけ早く言動も変えていくことができそうだ、と前向きにとらえておいてください。
能力をほめたり評価したりするのではなく、努力をほめたり評価したりしよう。努力によって子どもの実力が上がっていることに気づかせてあげることが、周りの大人の役割。
菊池 洋匡
中学受験専門塾 伸学会 代表
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