実力は「テスト1回の測定」ではわからない
次のセリフに共感できるか考えてください。
「うちの子、テストの点がいいときにほめると気が抜けてサボっちゃって、テストの点が悪いときに叱ると気合を入れ直して成績が上がるんですよ」
どうですか? このセリフを見て、「うちも同じだ」と思いましたか?
●無意味に子どもをほめたり、叱ったりしていませんか?
唐突ですが、サイコロを用意してください。サイコロを振って1か2が出たら、「低い! 真面目にやれ!」とサイコロを叱ってください。5か6が出たら、「高い! よくやった!」とサイコロをほめてください。すると、叱ったあとはサイコロの出目がよくなり、ほめたあとは出目が悪くなります。まるで、サイコロがあなたの言葉を聞いているかのようです。ほめられるといい気になってサボり、叱られると気合を入れ直したかのようです。
このしくみは、ちょっと確率を考えたらわかります。2が出たときに叱ったとします。2より悪い目は1しかないのに対して、2より良い目は3〜6の四つあります。叱るかどうかに関係なく、良い目になる確率のほうが高いのです。
5が出たときにほめたとします。5より良い目は6しかないのに対して、5より悪い目は1〜4の四つあります。ほめるかどうかに関係なく、悪い目になる確率のほうが高いのです。
平均より良い結果が出たら、次は今より悪い結果になり、平均より悪い結果が出たら、次は今より良い結果になる。つまり、平均に戻ろうとするように見える動きをします。これを「平均への回帰」と呼びます。同じことが子どもの成績でも起こります。テストでの成績には多少の運が絡(から)みます。体や心の調子に大きく左右されますし、得意な単元かどうかにも左右されます。自分の実力の平均値を中心に、変動するものです。
そのテスト結果を見て、本人は一喜一憂(いっきいちゆう)します。そして周りの大人は、成績がよかったらほめ、悪かったら叱ります。冒頭のようなセリフをつぶやきながら…。子どもの成長に対して、良い影響を与えるとはとても思えませんね。
●成績は単発ではなく、全体で見て判断しよう
もう、成績で一喜一憂するのはやめましょう。本当の実力は、テスト1回の測定ではわかりません。実力±運=成績で、運がどれだけ絡んでいるか、見切ることはできないのです。成績は、グラフを長い時間幅で見て、全体的に上がっているかどうかで判断しましょう。
良いときの成績は自己ベストを更新できていますか? これまでで最も良い成績が取れたときは、力が伸びていると判断して喜んでもいいでしょう。悪いときの成績は、少しずつ上がっていますか? 失敗したなというときでも以前ほど低い点数を取らなくなったなら、それもまた進歩の表れです。前回と比べてではなく、これまでの数回分も含めて考えると、運の影響を減らして本当の力を見ることができるようになります。
そして、もっと重要なことがあります。それは、成績よりも子どもの実際の学習行動を見ることです。ほめるのも叱るのも、すべては「行動」に対して行いましょう。学習の質が高いかどうかは、いずれ必ず実力に反映されます。運に左右される成績よりも、どんな勉強のやり方をしているか、どれくらい勉強しているかのほうが、よほど正確にその子の未来の成長を予測できます。
成績を見るのは、勉強のやり方の方向性が正しかったか、成果につながらない間違った努力をしていなかったか、その確認のためというのが正しいスタンスです。学習行動をよく見る機会がないのなら、成績だけ見て中途半端に評価するのは避けてくださいね。
◆まとめ◆
テスト一回の成績には運が絡むので、結果だけで一喜一憂しない。テスト結果を判断するなら、複数回並べてみて、その上で運による波があると心得てから見る。テストの結果よりも、その結果に至るまでの行動がよかったかどうかに注目するほうが大事。
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