歯周病は、単なる「口の中の小さな病気」ではありません。多くの研究から、その健康被害は全身におよび、時として命の危険さえ招くおそれもあると判明したのです。ここでは、歯学博士の筆者が、歯科界きっての歴史ツウならではの雑学を交えつつ、最新の研究を紹介します。※本連載は野村洋文著『健康寿命は歯で決まる!』(イースト・プレス)の一部を抜粋し、編集したものです。

「リウマチになると、歯周病が悪化する」…実は逆!

歯周病と言うと、口の中だけの小さな病気と思われがちですが、驚くなかれ、最近、歯周病と全身の主要な疾患との間に深い関係があることがわかってきたのです。

 

昔から、歯周病が他の病気と関連性があることは経験則で知られておりました。糖尿病やリウマチになると、細菌に対する免疫力が低下するために、歯周病が悪化するというのは、まさにその代表的な例です。つまり、あくまでも全身的な病気がまず生じて、その後に歯周病になる、悪化する、というのがストーリーでした。

 

それが、多くの研究から、歯周病にかかると、その後に全身疾患にかかりやすくなる、もしくはかかってしまう、ということが判明したのです。やや誇張して申し上げますと、歯周病は命に関わる病気だったのです。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
(写真はイメージです/PIXTA)

アルツハイマーも…歯周病によって発症・悪化する病気

ここで、歯周病と関係のある全身疾患について、いくつか挙げてみることにします。

 

最初に、ある程度、世間に浸透した感がありますが、歯周病と糖尿病との関係です。ズバリ、歯周病を放置しておくと、糖尿病が発症しやすくなる、ないし糖尿病が悪化しやすくなってしまいます。

 

これは、歯周病により産生される炎症性サイトカイン(サイトカインは細胞同士の情報をやり取りする信号のようなもの)が、血糖値を下げる働きのインシュリン受容体を攻撃して、血糖値を下げにくくしてしまうことに原因があると言われております。

 

歯周病と心臓病との間にも密接な関係があることがわかっております。

 

歯周病菌は、歯肉から血管をとおって、心臓にも移動し、血管壁に炎症を起こします。すると、炎症部分が動脈硬化を起こし、狭心症や心筋梗塞の引き金になるのです。実際、動脈硬化の部分からは数多くの歯周病菌が発見されております。

 

同様の現象が脳血管でも起こりますから、歯周病になると脳梗塞等の、脳血管障害を引き起こしやすくなります。

 

歯周病と呼吸器の病気との関係も盛んに取りざたされております。歯周病菌を含んだ唾液が、気管支から肺に入り込むと、肺炎を起こすことがあり、特に高齢者の場合、唾液の誤嚥(ごえん〔飲みこんだものが食道ではなく気管に入ってしまうこと〕)をしやすいため、細心の注意が必要です。

 

最新のトピックスとして、歯周病菌がアルツハイマー病を悪化させる一要因になることが報告されております。アルツハイマー病は、アミロイドβという特殊なタンパク質が、脳内に蓄積することで、正常な神経細胞が機能しなくなり生じる疾患です。歯周病菌は、このアミロイドβの産生を促進してしまう働きがあることが明らかになっております。

 

また、歯周病は早産や低体重児出産にも関係しております。歯周病菌により産生されるサイトカインが、子宮の収縮などに影響を与えるためと考えられております。

 

最後に、歯周病に罹患(りかん)されている男性は、ED(勃起不全)となる確率が高まるようです。

 

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健康寿命は歯で決まる!

健康寿命は歯で決まる!

野村 洋文

イースト・プレス

人生100年時代を健康に生き抜くために、知っておきたいお口の知識がまるわかり! 「歯周病で心疾患のリスクが高まる!?」 「歯ぎしりでストレス発散!?」 「ダイエット中は口臭にご注意!?」 「ホワイトニングで虫歯が予防…

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