最近、歯列矯正や歯のホワイトニング治療など、歯に対する美意識が高まっています。後者についてはホワイトニング効果を謳う市販商品も多く出回っており、手軽に試せることから、関心のある人は少なくないでしょう。本当に効果のある治療法とは、どのようなものなのでしょうか。治療法のしくみや有効成分について、歯学博士の筆者が解説します。※本連載は野村洋文著『健康寿命は歯で決まる!』(イースト・プレス)の一部を抜粋し、編集したものです。

歯を「本質的に白くする」2つの有効成分

ホワイトニング! おしゃれなイメージで、してみたいと思っている方、大正解です。ありがとうございます。

 

歯科医の立場で、営業・宣伝するつもりは毛頭なく、ホワイトニングという言葉がそれだけ世間に浸透している証ですから、純粋に喜ばしい限りです。

 

実際、ホワイトニングには、歯を白くする効果に付随して、歯を丈夫にする効果もあります。

 

おしゃれなイメージを抱かれ、ホワイトニングを身近に感じていただけることは、歯に対する健康意識の向上という意味において、供給する側からしても願ったりかなったりなわけです。

 

おっと、話が先走ってしまいました。ホワイトニング、巷でかなり普及しておりますから、その説明もせずに、書き始めてしまいました。

 

ホワイトニング、ズバリ、歯を白くすることです。歯を削らず、薬剤(ホワイトニング材)の作用により、化学的に歯を白くする治療です。

 

少々、突っ込んで話しますと、薬剤により歯を漂白することで、白く明るい歯にすることです。

 

さらに突っ込んで申し上げますと、薬剤の中に含まれる、過酸化水素、または過酸化尿素の作用で、歯の中に存在する有色物質を分解し、歯を白くするのです。

 

さらに突っ込んでお話ししますと、過酸化水素は、金属や光、熱ですぐに分解し、ヒドロキシルラジカルとヒドロペルオキシルラジカルの2種類のフリーラジカルを生じさせます。このフリーラジカルが、歯の最表層のエナメル質、さらには、その内側の象牙質に浸透し、そこで暴れまくり、着色物質を分解するのです。

 

小難しい話にお付き合いいただきありがとうございました。要は、過酸化水素および、過酸化尿素が、ホワイトニングにおけるキーパーソンでありまして、この薬剤が含まれていないと、本質的にホワイトニングが体をなさないのであります。ここは非常に重要なところであります。

 

ところで、ホワイトニングの歴史は超がつくほどに古く、古代ローマ時代に遡ります。当時の人は、おしっこ(尿素が含まれています)を歯に塗ると、歯が白くなることに何故か気づいておりました。美しく白い歯をもちたい、古今東西、人間はそう思うようでして、古代ローマ時代、人々はおしっこを歯に塗っていたようです。ホワイトニングの原型のような行為が、2000年前にすでに行われていたのですよ。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

過酸化水素や過酸化尿素は、歯科医院しか使えない

さてさて、ホワイトニングには、歯科医院の診療室でおこなうオフィスホワイトニングと、みなさんが自宅でおこなうホームホワイトニングの二種類があります。それぞれの方法は、簡単に後ほど述べさせていただきますね。

 

ところで、現在、エステサロンなど、歯科医院以外でもホワイトニングを施行されているところがあります。といいますか、かなりの軒数が目立ってきております。

 

そこでは、市販の医薬部外品や口腔化粧品を使用して、お客さんが自分でそれを歯に塗り、LEDの光を当てて行うセルフエステ方式になっているようです。

 

薬事法で、エステサロンなど歯科医院以外の機関が過酸化水素や過酸化尿素を使用することは禁止されておりますから、当然、その両者を使うことができません。

 

先ほど述べましたが、ホワイトニングの本質は過酸化水素を使用してナンボのものですから、これが使用できないと、正直、ホワイトニングの効果は知れております。

 

おそらく、歯の表面の着色除去と、一時的な歯の乾燥で白くなっているのにすぎないのかもしれません。

 

誤解されたくないのですが、くれぐれも、エステサロンの悪口ではありませんからね。本質的に歯を白くされたいのであれば、やはり、歯科医院に行かれてください。

 

何はともあれ、健康な白い歯で、思い切り会話と食事を楽しむために、ホワイトニングをその一助にしていただければ歯科医師冥利に尽きます。

歯科医院でおこなう場合、平均3回で効果実感

ホワイトニング治療は、過酸化水素ないし、過酸化尿素を含んだ薬剤(ホワイトニング材)を、歯に塗ることで、歯を白くすることです。くどいですが、過酸化水素ないし、過酸化尿素が主人公であることはご説明しました。

 

さらに、歯科医院でおこなうオフィスホワイトニングと、自宅でおこなうホームホワイトニングの二つがあることも述べました。

 

では、まずオフィスホワイトニングについて極々簡単に説明いたしましょう。

 

患者さんが来院されると、

 

①歯面清掃といい、歯の表面のお掃除をします。歯についている汚れを落とします。

 

②リトラクター(開口器)という装置を装着して、歯肉の保護、防湿をします。薬剤が歯肉につくのを防ぐためです。

 

③ホワイトニング効果を高め、より白い歯にするために、リアクターという材料を歯の表面に塗ります。

 

④オフィスホワイトニング材(重要なことで、35%過酸化水素が含まれております)を歯の表面に塗ります。

 

⑤LEDにより光照射します。

 

⑥ホワイトニング材を除去します。

 

以上、④〜⑥を繰り返し3回行い終了となります。

 

なお、35%過酸化水素を使用しているため、治療中に知覚過敏が生じる場合があります。個人差がありますが、痛みが出た場合、我慢せずに、歯科医に伝えてください(声は出せませんから、手を挙げる、ブザーを鳴らす等)。その場合は、中止になります。

 

さてさて、ホワイトニングをして本当に歯が白くなるのでしょうか? 何回受ければ白くなるのでしょうか? という至極真っ当な質問をいただきます。

 

個人差がありますが、基本、白くなります。見本の写真のように真っ白とまではいきませんが、施術前よりきれいで白い歯になります。

 

ちなみに、欧米人について言うと、日本人とは比べ物にならない程、白くなります。ビックリするぐらい白くなりますよ。羨ましい限りですが、歯の解剖学的構造の違いですから致し方ありません。

 

欧米人は、日本人と比較し、歯の最表層のエナメル質が厚く、ホワイトニング材は、エナメル質に主に作用しますから、当然なのです。また、ホワイトニング治療自体がそもそも、欧米人を対象につくられたものでもあるのです。

 

何回行えばよいか? ですが、1回目で、その直後に驚くほど白くなる方もいらっしゃれば、施術後数日経ってから白くなる方もいらっしゃいます。

 

また、ホワイトニング治療は永久的なものではなく、経日的に白さは薄れ、もとの歯の色にもどってゆく傾向にあります。

 

ですから、それぞれの個人の状況・環境にあわせて行われることを勧めます。ご予算とにらめっこですが、平均で3回がスタンダードのようです。

 

大事なことを言い忘れました。ホワイトニングに医療保険は適用できません。自費治療になります。病気を治すわけではありませんので。

ホームホワイトニングは、効果が出るまで2週間以上

次に、ホームホワイトニングについてお話ししますね。まず、歯科医院に行き、全顎の型(上の歯だけホワイトニングしたい場合は、上だけの型、下の歯だけホワイトニングしたい場合は、下だけの型、となります)をとり、そこから、マウスピースを作製します。

 

そのマウスピースをお持ち帰りいただき、ホームホワイトニング用の薬剤(重要なことですが、10%過酸化尿素と決まっております。3.6%過酸化水素に換算できます)を、その中に貼付し、歯にはめ込んでホワイトニング効果を期待します。

 

1日2時間を、2週間行いますが、ご自身の事情で、間隔をあけて使用される場合は、当然期間は延びますね。

 

以上、オフィスホワイトニングと、ホームホワイトニングについて概要だけかいつまんでお話ししました。

 

薬剤に含まれる過酸化水素、過酸化尿素の濃度でもおわかりのように、(ホームホワイトニングと比較して、オフィスホワイトニングに使用される過酸化水素の濃度は約10倍です)、短期間、早急なホワイトニング効果を望まれる場合は、オフィスホワイトニングをお勧めします。

 

なお、ホワイトニング直後は、歯の表面を常時覆っている、ペリクルというバリアーのような膜が除去された状態になりますので、歯の表面が脱灰されやすく、色素が沈着しやすい状態になります。ですから、ホワイトニング直後は、酸性の飲み物や、カレー、ビーフシチューのように色の濃い着色しやすい食べ物、さらには喫煙については、避ける必要があります。

 

 

野村 洋文

木下歯科医院 副院長 、歯学博士

 

 

健康寿命は歯で決まる!

健康寿命は歯で決まる!

野村 洋文

イースト・プレス

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