「4,717万円」使った中年オヤジ初級投資家かめぞー
「アンティークコイン投資」が密かなブームになっている。
投資対象としての歴史は長く、ヨーロッパの人々は2000年もの大昔から資産の保全(物価の上昇に備えるインフレヘッジ)目的で、金などの貴金属から鋳造されているアンティークコインを保有してきた。
日本でも一部のコレクターが収集していたが、希少性やデザインの美しさなどから、アンティークコインの需要は拡大し続け、売買の際にインフレヘッジ以上の値上がり益まで期待できると認識されるようになり、広く世界中で投資対象として人気を集めるようになった。ネットオークションの発展ともあいまって、市場は過熱の一途をたどっている。
この波に乗らない手はない!と勢い勇んで4,717万5,000円もの投資をしたのが、中年オヤジ初級投資家「かめぞー」【写真1】。数ヵ月前には、1億5,790万円(税込み)の土地値物件の購入を即日決断した投資家である。
本企画内でかめぞーはアンティークコインのオークションに参加し、中世ヨーロッパ時代の金貨である「レオポルト1世 10ダカットコイン」1,650万円(手数料等込みで1,831万5,000円)、「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」落札価格2,600万円(手数料等込みで2,886万円)の2枚を落札した。総額4,717万5,000円。
激戦を制して競り落としたコインだったが、本当にその価値があったのか? 勢いそのまま、かめぞーは鑑定を依頼、落札直後のコインを鑑定会社のあるアメリカまでひとっ飛びさせていた。
そして本日。鑑定に出していた「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」が返ってきたのである。
「ちょっと……見たことない状態です。」
今回鑑定に出したのは、2,600万円(手数料等込みで2,886万円)で落札した「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」【写真2】【写真3】。現在世界に1枚しかなく、かめぞーが参加したオークションのカタログの表紙にもなった極めて貴重なコインだ。表面には司教が雲の上から街を見下ろす姿、裏面には教会・司教・騎士が並んでいる様子がそれぞれ描かれている。
オークション直後は「本当に良かったんだろうか……」と不安げな表情を見せていたかめぞーだったが、今回はずいぶんと晴れやかな顔だ【写真4】。
「投資に関していつも思い切りがよすぎたところがあったんで、反省の意味も込めてスタートした企画だったんですが……まあ人間、性分は変わらないですね」
手元に置かれたのは、何の変哲もない白いダンボール箱。アメリカから戻ってきた状態のまま、かめぞーが持参したものだ。「2,600万円のコインが入っているとは思えない」との声が上がる。
「ではさっそく」とおそるおそる箱を開けたかめぞー、直後に「どういうことですかね?」と困惑気味の様子……【写真5】。一体なにが?
「ちょっと……見たことない状態です。スラブケース※には入って返ってきているんですけど……デカい!! めちゃめちゃデカいです。CDみたいになってます」
※スラブケース・・・コインを封印したカプセルのこと。
イメージしていたのは、通常のコンパクトなスラブケースだった【写真6】。ところが返ってきたコインを見れば、成人男性が手を開いてようやく握れるサイズ、なんとパスポートよりも大きいスラブケースに入っている。確かにこの大きさには驚く(後ほど、コイン自体が大きかったため、大型コイン用のスラブケースに入ってきたと判明)。
間もなくかめぞー、スラブケース上部に記された鑑定評価が目に入った。表情が一変する。
「これはちょっと……」
まさか、「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」落札価格2,600万円(手数料等込みで2,886万円)、ボロボロの鑑定評価か!? 周囲に緊張が走るなか、
「口元が緩みますね……『MS62』という評価をいただいております!」【写真7】
……ご満悦のようだが、「MS62」の意味が周りには分からない。鑑定評価は「お値段ハウマッチ」ではなかったのか。
「アンティークコインの鑑定評価」の知られざる全貌
今回かめぞーが鑑定に出した先は、アンティークコイン鑑定のNGC社(Numismatic Guaranty Corporation)。1987年、アメリカのフロリダ州サラソタに創設された収集用コインの第三者鑑定格付け会社だ。24時間の交代制で鑑定作業を行っており、創設から32年間でおよそ4,500万個を超えるコインを評価してきたという。
NGC社の鑑定は下記のように分かれており、最高グレードが「MS(Mint State)=未使用のコイン」と「PF(Proof)=プルーフ加工されたコイン」、最も低いグレードが「PO(Poor)」となっている。
MS(Mint State)/PF(Proof)
SP(Specimen)
AU(Almost Uncirculated)
XF(Extremely Fine)
VF(Very Fine)
F(Fine)
VG(Very Good)
G(Good)
AG(About Good)
FR(Fair)
PO(Poor)
このグレードをさらに細分化し、1~70までの数字が振り分けられる。70が「完全未使用」、1が「かろうじて識別可能」の判定だ。つまり「MS70」「PF70」がもっとも高い鑑定評価であり、「PO1」はかなり厳しい鑑定評価ということだ【写真8】。
かめぞーが落札した「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」に付いた鑑定評価は「MS62」。数字は70が最高と考えると、まだ上があるように思えるが、実は65以上の数字を取るような状態のコインは、基本的に近世以降に鋳造された、そもそも新しいコインばかりである。
この「スイス ルツェルン 12ダカットコイン」は17世紀に発行されたコインであり、当時からの保管状況を考えると(スラブケースに入れて封をし、直接手で触ることができないようにして大事に大事に保管するなんて、せいぜい数十年前から始まった話だ)、62という数字は本当にトップに近い。この事情を踏まえれば、かめぞーの笑顔にも大いに頷ける。
「……信じていました。コインの本質でいうと、鑑定格付け会社の評価は色々意見がわかれるところではありますが、第三者から認められるのは素直に嬉しいですね」
初回に1億5,790万円(税込み)の土地値物件、第2弾に総額4,717万5,000円のアンティークコインと、本企画ですでに2億円超もの投資をしているかめぞー。今後の「体当たり」っぷりにも期待されたい。
GGO編集部