コロナ禍でも「賃金は前年並み」といわれているが…
新型コロナ感染により、業績が落ち込んでいる企業も多いなか、私たちの賃金にもじわりと影響がでてきています。
厚生労働省『毎月勤労統計調査』によると、現金給与総額は昨年、第1回目の緊急事態宣言が発令となった2020年4月以来、最新の調査である今年1月(速報値)まで10ヵ月連続のマイナスとなっています。
先日発表となった厚生労働省『令和2年賃金構造基本調査』では、賃金は、男女計平均30万7700円で、男性平均は33万8800円、女性平均は25万1900円。男女間の賃金格差にそれほど変化はなく、また対前年比でみると、それぞれ、0.6%増、0.8%増、0.8%増と、コロナ禍でも賃金全体ではほぼ前年と同水準をキープしています。
しかし実感としては、コロナ禍で業績を伸びた会社もあれば、大きく下げた会社もあります。社会全体としては暗いムードに包まれていますから、前年比プラスでも実感はまったくない、という人がほとんどでしょうか。
さらに詳しく見ていきます。男女計の平均賃金は30万7700円でしたが、高いほうから数えて10分の1番目にあたる人の賃金は48万2700円、2分の1にあたる人の賃金は全体平均よりも下がり28万7100円。
さらに低いほうから数えて全体の4分の1番目の人の賃金は22万2800円、10分の1番目にあたる人の賃金は18万4000円。高給取りの一部の人が全体の平均賃金を押し上げている構図が見えてきます。
学歴別に見ていくと、男性では大学院卒で46万5200円、大学卒で39万1900円、専門学校卒で30万9300円、高校卒で29万5000円。女性では大学院卒で40万4300円、大学卒で28万8300円、専門学校で26万3400円、高校卒で21万8000円。また賃金のピークは男女ともに大学院で70歳以上、大学卒で50~54歳となっています。さらに賃金カーブは、男女ともに大卒と大学院卒の傾きが大きく、男性のほうがその傾向が大きく、学歴による賃金格差が顕著になっています。
賃金格差といえば、雇用形態によっても大きく、男女計では、正社員・正職員(年齢42.2歳、勤続年数12.5年)が32万4200円に対し、正社員・正職員以外(年齢48.8歳、勤続年数8.7年)では21万4800円。10万円以上の差が生じています。
日本標準産業分に基づく16大産業別に見ていくと、男性「金融業、保険業」が最も高く47万9200円。一方で最も低いのが「宿泊業、飲食サービス業」で27万8200円でした。女性では、「情報通信業」が最も高く31万5500円。一方で最も低いのが男性同様「宿泊業、飲食サービス業」で20万9600円。産業間では男性で20万円程度の格差が生じています。