サブスク時代のリテンションマーケティング(解約防止)に注目が集まっています。コロナ禍で初めてサブスクリプションやECを体験した人も急増するなど、入会や注文が手軽にできる半面、利用者は解約もネットで簡単にできるようになり、企業は解約という課題が突きつけられています。リテンションマーケティングに詳しい株式会社Smashの佐野敏哉氏が膨大な顧客データから解約防止につながる7つの要素を明らかにします。本連載は株式会社Smashの佐野敏哉氏がいまデジタルマーケティングの現場で何が起きているか、分かりやすくレポートします。

利用者にちょっと先の未来の情報を提供する

② 解約決定者や解約タイミングをなるべく多くする

 

サブスクや定期通販の解約はなぜか月末に集中します。理由として、顧客側はなんとなく月末に課金されると認識をしてしまっているため(実際、月末に課金されるサービスもあります)、このような現象がおきてしまっています。事業者側は、課金は顧客の申し込んだ日に毎月設定するといいでしょう。

 

また、サービスや商品をカップルや家族、時には親子で使ってもらうようなプロモーションを行い、一人が解約したいといっても、他の人が支持していれば解約を抑止できるようにしましょう。

 

最近のトレンドでデジタル系のサブスクリプションサービスはこのマルチアカウントプランの選択ができるサービスが増えてきました。通販などもこのような商品によっては可能なはずです。

 

図1:プランにより解約決定の確率が下がっていく
図1:プランにより解約決定の確率が下がっていく

 

③ちょっと先の未来を共有する

 

「来週から、こんなコンテンツが始まります」「次の配送から新しい使いやすいパッケージで配送します」「あと2カ月の継続でプレゼントが届きます」……。このように、利用者と事業者は常に長期的なビジョンを共有することで、リレーションを築き、解約という選択肢を薄めてくれるでしょう。アプリなどのバグも「あと1カ月で修正されるので、待っていてください」と伝えることも大きな効果があります。

 

また、ここで忘れてはいけないのが、事業者側は顧客の声(VOC)に傾聴し、積極的に改善していくことです。利用者も自分の言っているリクエストが聞いてもらえる、改善されるサービスであれば、期待をして利用を継続してくれるでしょう。企業は常に、利用者の声を聞ける窓口をつくり、改善していくその姿勢を示していくことも大切な要素になります。

 

④ライトキャンセルをなくす

 

これは、やや技術的な話にもなるですが、住所変更や、支払い方法の変更、クレジットカードの番号変更など、利用者は少しでも面倒くさいと思ってしまうと解約しようかと安易に考えてしまいます。このような仕組みの改善は、一旦整備してしまえば半永久的に提供できるものなので、利用者から、「使いづらい」といった声が上がったら徹底的に、改修・改善を行うことをオススメします。

 

ヘルプやサポートページに書いてあるとは言っても、利用者がそこに辿り着き、理解する必要があります。多くの企業が、それはヘルプに書いてあるけど、読んでくれないと言います。それは顧客に求めるのではなく、事業者側が導線や探しづらさの課題を改善する必要があるでしょう。現代の人は特に、操作方法や説明は読まない方が多く、直感的に操作をして戸惑えば、簡単に投げ出してしまう前提で、機能やページを構成することをお薦め致します。

 

⑤なぜそうなのかを教える

 

「なぜ、この化粧品は高いのか?」
「なぜこの商品は届くのに1カ月かかるのか?」

 

そこには事業者の何らかの理由があるはずです。そういう理由は言いづらいことであっても、きちんと顧客に伝えるべきです。時には、その理由が価値となり口コミにもなります。ただ、その理由が、到底納得できないようなものであれば、それは徹底的に改善すべきです。

 

また、顧客のことを考えて箱は二重にしている。ネイルをしている人でも、簡単に剥がせるようにテープの端を折り曲げている。そんな優しさも、そっと伝えるようなコミュニケーションも必要でしょう。親切や優しさに気づいてもらえず、解約されてしまうのもの切ない話ですから、積極的な発信で利用者との距離を縮めることも解約抑止の大きな要因となります。

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