「相続税の税務調査」に 選ばれる人 選ばれない人
>>1月16日(木)開催・WEBセミナー
障がいを持つ子に遺した財産、使い切れなかった場合は
1:相続人が不存在の場合の財産の行方
相続人が存在することが明らかでないとき、相続財産は法人とされ(民法951条)、相続財産管理人が選任され相続人の調査等が行われることになります(民法952条)。
相続人がいないことが確定し、かつ特別縁故者への分与の申立てが認められなかったり、認められても分与されなかった残余財産がある場合には、相続財産は国庫に帰属し、相続財産法人は消滅します(民法959条前段)。
2:民事信託の活用
(1)民事信託を活用した場合のメリット
障がいのある息子に子など法定相続人がいない場合に、遺言でその息子に財産を遺したとしても、息子が亡くなった際に財産が残っていたときには、その財産は国庫に帰属してしまいます。
しかし、障がいのある子を持つ親のなかには、息子の死後は、残った財産を息子と同じような障がいを持つ子らのために役立てたい、お世話になった施設や面倒を見てくれた親族に寄付又は贈与したいという希望を持っている方が少なくありません。
「親亡き後」の問題の一場面として、この残余財産の国庫帰属は障がいのある子を持つ親の大きな悩みになっています。
このような親の悩みを解消するために、民事信託を利用するという選択肢があります。すなわち、当初受益者を親自身、第二次受益者を息子、そして残余財産に関する帰属権利者を親の希望する施設や親族などを指定した民事信託を設定することが考えられます。
このように民事信託を設定しておけば、親の死亡後に、息子がお世話になった者が自ら特別縁故者として分与を申し立てる必要がなくなるとともに、財産が国庫に帰属してしまうことを防ぐことができます。
(2)留意点
ア 注意が必要なスキーム
このように、障がいのある子を持つ親にとって、民事信託を設定しておくことで、子が死亡したあとも、親が望む者へ財産を渡すことができます。
ここでの注意点として、例えば、障がいのある子が死亡したあとの残余財産の帰属先を受託者とした場合には、子の生前に信託財産を使わずにいた方が信託終了後に受託者が多くの財産を受け取ることができるという関係にあるため、受託者が子に対し適切な給付を行わないという心配が生じます。つまり、受託者を帰属権利者とする場合には、受益者とのあいだで潜在的な利益相反の関係にあります。
そこで、受託者が子に対し適切に給付することを担保する仕組みを構築することが必要になります。具体的には、訴訟を含む紛争解決を行うことのできる弁護士が受益者代理人として、受託者の監督に当たることが望ましいでしょう。
イ 後見利用の必要性
また、障がいのある子に関し、身上保護の必要性がある場合には、民事信託のほかに、法定後見を利用することも必要になります。この場合には、後見人に弁護士が就任することにより、民事信託において受益者代理人を利用しなくとも、受託者を監督することが可能になります。
弁護士には、どのような制度を利用するかに応じ、それに合った適切なスキームを構築することが求められます。