「接し方がわからない」「予想外の反応に戸惑う」大人の発達障害に悩むのは本人だけじゃない。長年、医療福祉相談員として働いてきた野坂きみ子氏は書籍『“発達障害かもしれない人”とともに働くこと』のなかで、ともに向き合い、仕事をしていくうえで必要なことを解説しています。

発達障害の傾向に気づかない

発達障害の傾向があるが、本人には自覚がない場合があります。

 

○相談事業所職員。

早くに仕上げないといけない書類があるのに、来談者が来ると率先して受け、いつまでも話している。書類はいつまでもでき上がらず、彼女の分ができないとほかのスタッフにも差し支える。しかし勤務年数が長いので、ほかのスタッフは注意しづらい。こんなことはしょっちゅうで、締め切りギリギリに残業をして作る、あるいは間に合わない。周りの人はうんざりしている。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

○営業事務職員。

ひとつの案件の処理中、「これ、誰か頼めないかな」と課長が言うと「はい、わかりました」と受け、いくつも抱えなかなか処理できない。「みんな受けないからー、仕方ないでしょう」と、机の上は書類の山で、一体、どこに何があるのかわからない。

「やさしさ」が裏目に出ることも…

○小さな会社の事務職員。

事務用品の発注、管理もしているが、物品庫で探せないとすぐ発注する。コピー用紙やごみ袋、洗剤など、ほかの職員に言われてすぐ出せないと不安なので、そろえておきたい。物品庫はいつも物にあふれ、よくわからない状態になっている。

 

〔ADHDの傾向には、先延ばしがあり、何となく気持ちが進まないものの取り組みを先に延ばし、にっちもさっちも行かなくなってから取りかかるということがあります。自分もつらいですが周りも困ります。それが重大なことになると、さすがに自覚します。

 

また、気持ちのやさしい人が多いので、困っている人に黙っていられないというところがありますが、自分のことはあまり顧みていません。ほとんどの場合、そんなことしている場合じゃないでしょと思いますが、やってあげようと思う気持ちで動いてしまい、机の上、部屋の中は混乱状態ということがよくあります。

 

優先順位をつけるのも苦手です。結局は誰かが代わってしてくれて決着ということも少なくありません。

 

また注意が散漫で物の在りかも忘れてしまったりしますが、ないと責められるのは嫌なので次々買います。これらのことによって起こる不都合には程度の差があり、ADHDの傾向があってもすぐさま職務が遂行できなくなるわけではありません。むしろ、周りの人の感情的な問題が大きいように思います〕

 

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野坂 きみ子
1958年、札幌生まれ。
大学卒業後、精神科病院、リハビリ病院、総合病院、一般病院と30年余り病院の医療福祉相談員として働く。
その後3年間、ハローワークで障害者就労支援の仕事をする。現在メンタルクリニック勤務。
精神保健福祉士。北海道大学大学院社会システム科学博士後期課程中退。

 

 

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