新型コロナ感染の拡大によって苦境に陥る企業の中には、早期退職を募るケースも。中には「脱・会社人」と、喜び半分で応募するケースもあるといいます。早期退職後、本当に夢のような生活が待っているのでしょうか。

50歳で早期退職…手にする年金額は?

次に早期退職制度を利用した際に手にする公的年金を考えてみましょう。先ほどと同様、国税庁『民間給与実態統計調査』による、給与所得者の平均額だけ所得があった場合を考えてみます。

 

もし定年の60歳まで勤め上げた場合、65歳から手にする公的年金は、老年基礎年金が月6万4000円、老年厚生年金が月7万4000円。合計、13万8000円を月々手にすることになります。

 

【男性単身世帯(65歳~)の月の支出】
消費支出 13万6923円
 食費(外食含む) 4万687円
 住居費 1万1182円
 光熱・水道費 1万2549円
 家具・家事用品 4006円
 服飾費 2084円
 保険・医療費 8026円
 交通・通信費(自動車関連費含む) 1万7422円
 教育娯楽費 1万5338円
 その他(散髪、タバコ、交際費等) 2万5631円

 

一般的な65歳以上の単身者の生活であれば、年金と生活支出で毎月トントンという水準です。では仮に50歳でリタイアしていたらどうでしょうか。

 

退職後も国民健康保険はしっかりと払い続けていたとするならば、老年基礎年金は60歳で定年を迎える場合と同様、月額6万4000円。老年厚生年金は4万8000円。合計11万2000円となります。もし60歳まで勤め上げていた場合より、年間30万円強の差が生じる計算です。そして一般的な生活を送ろうとすると、毎月2万4923円、年間29万9076円の赤字になります。

 

お金が、ない…(※画像はイメージです/PIXTA)
お金が、ない…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

仮に、平均年齢まで生きたとしましょう。厚生労働省の『簡易生命表(令和元年)』によると、2019年の日本人男性の平均寿命は81.41歳。65歳で公的年金を手にするようになってから、16.41年の生活があるわけですから、単純に490万7837円の不足が生じる計算になります。

 

公的年金を手にする前の不足分と、公的年金を手にした後の不足分を合わせると、年収の2倍の退職金を手にすることを前提に、2182万6077円の貯蓄があれば、平均年齢まではまかなえる計算です。

 

―50歳で2000万円を超える貯蓄があるから、早期退職を実現!

 

これはあまりにも早計であることは、誰が見ても明白。仮に平均的な暮らしをしていたとしても、平均年齢を超えては家計が行き詰まりますし、介護・医療には想定外はつきもの。

 

厚生労働省『サービスにかかる利用料』によると、要介護5で介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入居した際の1ヵ月の自己負担額は、多床室を利用した場合で10万2200円、ユニット型個室を利用した場合は13万9500円。介護老人福祉施設の平均入所期間は約4年といわれているので、多床室であれば年間約122万円、4年で約490万円、個室であれば年間約167万円、4年で約669万円が必要となります。

 

介護のことを考えて、700万円ほどプラスαであれば……というわけにはいかず、いくらあっても安心とはいえないのが、老後の難しさです。

 

「年収の2倍」の謳い文句だけで、夢の早期対象を実現しようとしているなら、現実は甘くない、というのが現状。老後破綻が目に見えています。せめて、公的年金を手にする時まで、「収入ゼロ」は回避したほうが身のためです。

 

 

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