事業再構築補助金…必要となる要件は?
続いて、必要となる要件を見ていきます。製品等の新規性、市場等の新規性、売上高要件が設定されています。各要件の補足説明は以下の通りです。
「製品の新規性」については[図表2]の4要件をすべて満たす必要があります。「過去に製造等した実績がないこと」は、特に違和感はありません。「製造等に用いる主要な設備を変更すること」とあることから、設備投資は不可避です。設備投資は、是非補助金を使ってくださいというメッセージのようです。
この指針公表前までは同じ製造ラインで新規製品を製造し販促に資金を集中投下するようなケースも補助金対象になりうると筆者は考えておりましたが、残念ながら対象外です。指針の手引きには、対象にならない例が記載されています。
つまり機能が変わらず、性能が向上するだけでは対象外との説明です。この補助金を使って新製品を作りつつも従来製品の生産効率アップを狙うことはできないようです。このケースを狙っていた企業は多かったのではないでしょうか。
「競合他社の多くが既に製造等している製品等でない」については解釈に困ります。多くとはどの程度なのでしょうか。対象外となる例を見てみます。
確かに焼きプリンを置いていないスーパーやコンビニを見つけるのが困難なほど流通はしています。よってこれが対象外なことはわかります。では「OO地鶏の生みたて卵」を使ったトロトロ生プリンならば対象なのでしょうか。
手引きでは「性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品等であることを示す必要があります。」とあり、例として「既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等」と記載されています。
また「既存の製品等と新製品等の性能に有意な性能の差が認められない場合は要件を満たしません。」とも記載されています。有意とは一般的になじみのない言葉ですが、結果が偶然によるものか、意味があるものかを分ける行為です。
新製品と認められるには、新しい設備を導入し、自社では過去に製造実績がなく、競合他社の多くも製造しておらず、既存製品と比較し性能に有意な差が認められるの4つすべてを満たす必要があります。一般的に考えられる新製品よりも、かなり厳格な概念です。
これまでコメントした製品の新規性要件の他、市場の新規性、売上高要件も設定されておりますが、指針をご覧ください。製品の新規性要件よりもずっと理解がし易いはずです。
冒頭にも申し上げましたが、今回の指針でかなり難易度が高くなりました。
一番難易度が低いと思われる新分野展開でさえも、製品の新規性については先の4要件をすべて満たす必要があり、その他市場の新規性、売上高要件も満たす必要があります。
製品の新規性、市場の新規性に求められる要件だけでも客観的なデータを用いたマーケティングの環境分析、製品分析や統計の知識が必要となります。さらにこれらを実効性、妥当性のある事業計画に落とし込むことが求められます。これまでのビジネス系の補助金よりも、求められる範囲が広く、対応できる申請支援者は限られるのではないでしょうか。
筆者はベンチャーCFO時代にベンチャーキャピタル、事業会社から多額の出資をしていただいた経験があります。その際の事業計画書で重視したのは、独自性(いわば新規性)、収益性、成長性の3つです。一方でビジネス系補助金の申請で重視していたのは、収益性、続いて成長性であり独自性はほとんど問われていませんでした。
今回の事業再構築補助金は新規性が重視されていることから、ベンチャー企業の増資支援にも長けた認定支援機関を選びましょう。
今回の難易度アップは、そのまま申請支援者の負担増につながります。工数が増えるのです。採算を合わせるために、補助額の大きい企業への支援をより重視すると予想されます。
難易度のアップ、要件の厳密化は悪い事ばかりではありません。
多くの企業は要件を満たす申請書を作成すること自体が困難でしょう。見方を変えれば、要件を満たす申請書を作成することができれば競争率は低いはずです。
第1次の公募開始は3月、申請締め切りはGW頃でしょう。指針に基づき事業期計画の策定を始めましょう。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】