医療法人社団鈴木内科医院理事長兼院長の鈴木岳氏は、著書『安らぎのある終の住処づくりをめざして』のなかで、入居者ファーストの「終の住処づくり」について語っています。当記事では、鈴木氏が自身の経験を元に、「入居者にとって快適なサービス付き高齢者住宅」について考察していきます。

「自立型サ高住への入居」の意外な落とし穴

こんな狭いところに入居してくれるものだろうか?と甚だ不安でした。しかし、蓋を開けてみれば、ユーザー目線の母のいう通りでした。部屋の狭さが集客に大きな支障になるということはなかったのです。それどころか、25〜26㎡の部屋にご夫婦でのご入居をご希望される方が多々いたのは驚きでした。

 

私の35㎡でなくてはならない、というスウェーデン流は札幌で終の住処を目指す住宅事業においては机上の空論、無駄に広い部屋という結果になってしまったようです。

 

これは訪問診療で他社の大きなお部屋のご夫婦をうかがった際にも実感させられました。ご入居間もないというのにゴミ屋敷と化していたのを見た時、広すぎるというのも罪なものだと感じました。

 

入居希望の方の多くは、現役当時と同じ感覚で広いお部屋を選びます。しかし、認知症や身体疾患を患い、動けなくなってしまうと、訪問介護、看護なしでは部屋の恒常性が保てなくなってしまいます。サービスを追加すれば新たに費用がかさみます。自立型サ高住への入居に際しては、この落とし穴が、案外見逃されているように思います。

 

このような経緯で決まった居室の広さですが、開業後の経験や多方面での見学を踏まえても、終の住処としては狭すぎないものなのだと感じています。広すぎて、手すりやつかまり棒だらけの殺風景な部屋よりも、慣れ親しんだ食卓一つと棚を置き、それでつかまり歩きできる範囲の広さが、終の部屋には適正なのでしょう。

 

老いるにつれ、いつの間にか現在の自分に、広くなってしまった自宅の空間が環境障壁になってしまうこともあるのです。住み替えはそれを和らげる効果もあるのかもしれませんね。

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鈴木岳
医療法人社団鈴木内科医院
理事長、院長


1966年1月1日生まれ。医療法人社団鈴木内科医院理事長、院長。医学博士。
1991年より市立稚内病院を皮切りに16年の勤務医時代を経て2007年から4年半、実業とカーリングの研鑽を兼ねてスウェーデン、カロリンスカ大学消化器内科に留学、のちに就職。帰国後はスウェーデンで学んだ経験を活かし、2019年日本シニアカーリング選手権、男子日本代表。本業ではかかりつけ医として医療と介護を営み、自前の地域包括ケアシステムを構築中。スウェーデンで学んだLoveandCareをモットーに、愛のある医療と介護、経営を通した地域の幸せ作りに挑戦中。

HP:「札幌 鈴木内科」検索

日本内科学会総合内科専門医、内視鏡学会専門医、消化器病学会専門医、認知症サポート医、スウェーデン医師資格、北海道スウェーデン協会常任理事、札幌カーリング協会理事、2003年北海道医学会賞受賞。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『安らぎのある終の住処づくりをめざして』より一部を抜粋し、再編集したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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