なぜ、認知症なんかになるんだ――。物を失くす、使えなくなる、物忘れが増える……。刻々と変わりゆく妻の様⼦に⼾惑う⽇々について、棚橋正夫氏は書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』で記しています。本記事では、「認知症を発症したかもしれない」と感じるきっかけとなった、生活の変化について解説します。

「チャイルドロック」がかかった…認知症の些細な変化

認知症の発症は微妙で分かりにくい。妻と一緒に暮らしてきた夫でさえ気付きにくい。もの忘れがあっても「年だから」と何気なく軽くすましてしまう。老化と間違えやすい時期だった。しかし、妻の度重なる記憶喪失や異常な行動・言動に気付き始めたのは、2012(平成24)年の初頭だった。

 

妻の変化の兆しをいくつか挙げてみる。

 

洗濯機は、数十年使い慣れていたのに、ボタン操作の手順が分からなくなった。適当にボタンを押すので「チャイルドロック」がかかり動かなくなることがあった。

 

その都度「お父さん洗濯機が壊れた。動かない」と訴えた。

 

洗濯は、家事の一環として、妻にやらせたかった。簡単な操作手順を厚紙に書いて、洗濯機の横にぶら下げ、それを見ながら操作させた。何度も何度も手順を見せて教え込んだ。

 

また、テレビやエアコンのリモコン操作も、たくさんのボタンがあるので混乱し難しいと思い込み使おうとしなかった。テレビは、「電源を入れる」「チャンネルを選ぶ」「電源を消す」の三つの基本操作を、紙に書いて横に置き、それを見ながら何度も教えた。

 

エアコンは、妻のいる時間帯を事前にタイマーセットし毎回作動させていた。とても面倒だったが続けた。

 

こんなことがあった。ある日、テレビのリモコンで異常行動を起こした。妻が2階の居間で洗濯物をたたんでいた。固定電話の子機が鳴った。妻は、「もしもし。もしもし」と叫んでいる。呼び鈴は鳴り続けていた。

 

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本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『認知症介護自宅ケア奮闘記 私の知恵と工夫』より一部を抜粋したものです。最新の税制・法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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