2025年には、日本の中小企業の約半分にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されており、「事業承継」や「M&A(企業の合併と買収)」による対策が急がれています。今回は、後継者不在で「廃業」を選択した場合、資金が不足して「倒産」しないように廃業の準備を進める方法を解説します。※本連載は、植木康彦氏、髙井章光氏、榑林一典氏、宇野俊英氏、上原久和氏の共著『ゼロからわかる事業承継・M&A90問90答』(税務研究会出版局)より一部を抜粋・再編集したものです。
廃業にかかる5つの「支出事項」
廃業においては資金が不足しないように注意する必要がありますが、直近時の貸借対照表において資産超過となっていても、安心はできません。以下のような支出事項が生じますので、これらを考慮の上で、資金計画を立てる必要があります。
①帳簿価格より実勢価格が少ない資産
例えば、不動産について取得時の価格が帳簿に計上されていても、実際に売却処分する場合はもっと安くなってしまったり、さらに売却費用がかかるため、手元に入る金額が少なくなる場合があります。
②簿外債務
例えば、従業員の退職金など負債項目に計上していなかったり、計上していても十分な金額でない場合があります。
③撤退費用
例えば、店舗を撤退するためには原状回復費用がかかるため、その費用が必要となります。
④在庫等の処分価格への調整
優良在庫であったとしても、早期に一括して処分する場合には正規の金額よりかなりディスカウントする必要が生じます。
⑤清算手続費用
清算手続を行うために、例えば決算手続を行う際の税理士費用や解散登記の費用等がかかります。
株式会社を「解散」させるには?
株式会社を解散させるためには、株主総会特別決議にて解散を決議し、その後の清算手続を担当する「清算人」を選任して、それぞれ登記します。また、負債が残らないようにするため、官報にも解散した旨を掲載し、官報掲載日から2ヵ月間は原則として支払行為が禁止されます。
資産換価が終了し、負債の支払も終われば、最終的に残った資産(現金)は株主が取得することになります。清算人は任務終了の報告のための株主総会を開催し、清算結了の登記を行います。なお、会社の帳簿等はその後においても10年間は清算人が保管しなければなりません。
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Ginza会計事務所
公認会計士・税理士
1962年新潟県柏崎市生まれ、明治大学商学部卒業
高野総合会計事務所パートナーを経て、Ginza会計事務所創立(代表)
現在は、事業再生、事業承継、M&A、財務・税務DD、価値評価、税務支援等の業務、及び経営者の参謀役に注力。
事業再生研究機構理事
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髙井総合法律事務所
弁護士
1992年司法試験合格、1995年第二東京弁護士会弁護士登録。あさひ法律事務所(現あさひ法律事務所、西村あさひ法律事務所)アソシエート弁護士勤務、須藤・高井法律事務所パートナーを経て、髙井総合法律事務所開設(代表)。
企業法務、企業組織再編実務、企業再建実務、中小企業関係実務など幅広く業務を行っているほか、『ケーススタディ事業承継の法務と税務』(ぎょうせい、2018年)など事業承継に関する書籍や記事を多数執筆。
現在、日本弁護士連合会日弁連中小企業法律支援センター副本部長、中小企業政策審議会臨時委員(経済産業省)、「事業引継ぎガイドライン」改訂委員会委員(中小企業庁)、事業引継ぎ支援事業の評価方針検討会委員(中小企業基盤整備機構)、日本商工会議所経済法規専門委員会委員など務める。
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OAG税理士法人
税理士
1965年山梨県生まれ。半導体商社勤務を経て、現在、OAG税理士法人マネジメント・ソリューション部部長、税理士。
専門誌への寄稿や講演活動のほか、経済産業省「新たな組織法制と税制の検討会」委員、「事業再生研究機構」理事、「全国事業再生・事業承継税理士ネットワーク」幹事などの委員を務める。
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株式会社UNO&パートナーズ
代表取締役
1989年株式会社三菱銀行(現、株式会社三菱UFJ銀行)入行。中小、中堅企業の法人融資を主に担当。1997年、事業会社に転じ、ベンチャー投資、M&Aを経験後、独立系のベンチャーキャピタルでフロント、バック部門を経験。2007年より安田企業投資株式会社(保険会社系ベンチャーキャピタル)でベンチャー投資、バイアウト投資に従事。
2015年7月独立行政法人中小企業基盤機構で事業引継ぎ支援事業全国本部プロジェクトマネージャーに就任(現任)。
2016年株式会社UNO&パートナーズ設立。
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上原公認会計士事務所
所長
公認会計士
関西学院大学商学部卒。2002年に北國銀行入行後、有限責任監査法人トーマツ、東京商工会議所に設置されている東京都事業引継ぎ支援センターの統括責任者補佐を経て2017年7月より中小機構中小企業事業引継ぎ支援全国本部のプロジェクトマネージャーに従事。
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