借地権とセットになっている建物が「借地権付き建物」
土地を借りるといっても、借りた土地にすべて借地権が生じるわけではありません。借地権とは、「建物を建てるために地代を払って土地を借りる権利」のことです。ですから、仕切りを区切っただけの駐車場のように、建物を建てる目的のない土地を借りても借地権は生じません。
実家の相続の場合は、家が建っているのですから当然、借地権とセットになっており「借地権付き建物」と呼ばれます。借地権付き建物は、いわば地主との共有不動産ですから通常の所有権の住宅よりも制約が多くなります。なぜそんな住宅をわざわざ買うのかといえば、建物は居住者の所有なので住んでいる分には通常の持ち家と変わりません。
土地は借りているので、当然、買うより安くマイホームが持てます。グレードの高い家を建てたり、便利な場所に家を建てることもできます。これが、借地権付き住宅を購入する最大のメリットです。
借地権で立てた実家の相続では「地主」との関係が重要
借地権付き住宅は全体の3%程度であまり多くはありませんが、相続した実家が借地権で建てた住宅であるときは、通常の所有権の住宅とは違う問題が生じます。主なものは地主との関係です。借地権付き住宅を相続しても相続自体は地主と関係ありません。
しかし、亡くなった親からの契約の引き継ぎ、代替わりに伴う地主からの要求(地代の値上げ、土地の返還など)といった地主との関係が発生し、地主が絡んだトラブルになるのです。
「借地権」を相続するときに起こる地主とのトラブル
借地権のトラブルは相続をきっかけに起こりやすい
借地権を巡る地主とのトラブルも、多くは相続をきっかけに起こります。親から子にうまく引き継がれないこともありますが、親の代との関係が子の代になると希薄になるからです。地主との関係がうまくいっていてこそ契約関係もうまくいきます。
借地人の代替わりは地主にとって利益を得るチャンス
地主は持っている土地をできるだけ有効に活用したいと思っています。借地人から地代を得て利益を得ていますが、地代をなかなか上げられなかったり、土地が値上がりして高く売れるようになったりと長い間には利益の効率が落ちてくることもあります。
そうすると、一度借地を返してもらって売却したり、建物を建て替えて賃貸したりするほうが利益が上がると考えます。しかし、借地人は借地借家法で強い権限に守られていて、地主側の都合で地代を上げたり、土地を返してもらうのはなかなか困難です。
こうした中、相続での代替わりは、地主からすれば高い利益を生むチャンスとなります。親が亡くなって空き家になった場合には、相続人である子に土地を返してほしいと申し入れる機会になります。また、相続をきっかけに契約内容を改め地代の値上げも提案しやすくなります。
借地権を売るときには地主が承諾を渋る
相続によって空き家になったり、親が介護施設に入居して入居費用を捻出したいときなどは、借地権を売るという事情が借地人に生じます。借地権を売却するには地主の承諾が必要ですが、地主は見知らぬ第三者に売却することは難色を示すことがほとんどです。
松原 昌洙
株式会社中央プロパティー 代表取締役社長
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