相続財産に「不動産」が含まれる場合、親族間のトラブルを招きやすくなります。そして、問題を曖昧のまま放置すると、孫の代まで絡んで収拾がつかなくなるケースもあります。今回は、親亡き後の「共有名義の実家」を巡って起こった兄弟間トラブル事例と解決策を紹介します。※本連載は、松原昌洙氏の著書『不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続』(毎日新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

共有名義のトラブルの解決は、「共有名義の解消」のみ

共有名義のトラブルを解決するのは、共有名義(共有状態)を解消する以外にありませんが、どのように解消していくかという解決のパターンはさまざまです。

 

いちばん多い相談者は、共有者同士でいくら話し合っても意見が一致せず、「話し合いに疲れ果てた」と音を上げている人です。自分がいくら頑張ってもストレスが増すばかりで、何とかならないかとすがってくるのです。

 

ここでは、比較的よくみられる事例を紹介します。同じようなパターンでも事例で示した解決プロセスが必ずしも正解とは限りませんが、ひとつの参考として役立てていただければと思います。

「全部売却」…共有者全員で合意して不動産を全部売る

共有者全員の合意が必要なことがもある(画像はイメージです/PIXTA)
共有者全員の合意が必要なケースもある(画像はイメージです/PIXTA)

 

全員が等しく恩恵を受けるという意味では、最もスムーズな解決方法です。空き家で誰も住む予定がなく、活用もしないのであれば理想的な選択肢です。

 

〔事例〕
父親の死亡後、実家で独りで住んでいた母親が亡くなり、兄弟5人が法定相続人となりました。遺産分割協議書も作成し、持分5分の1ずつで相続の登記もすませました。実家は空き家なので母親の三回忌がすんだら売却することで5人は合意していました。次男は当然のことと思っていたので口約束のまま特に文書は取り交わしていませんでした。

しかし、三回忌の後に長男は売却ではなく他の兄弟の持分の買い取りを提案してきました。弟たちも長男が要望するならと応じることにしましたが、いつまでたっても具体的な話をしてきません。催促しても長男は応じず、このままでは、共有名義の解消ができないので弟たちは困り果ててしまいました。

 

問題点のポイント

口約束だけで文書を交わしていなかったことでトラブルにつながりましたが、問題の根はコミュニケーション不足にあります。話し合いを深めることによって不信感を拭うことがカギとなりますが、身内同士の感情のもつれはなかなかほぐすのが困難です。

 

解決策の提案と解決のプロセス

この事例では、弟たちは訴訟を起こすことまで考えているといって相談してきました。しかし、訴訟手続きで費用や時間もかかることから、当方ではもう一度、長男と話し合うことを勧めました。

 

長男と弟たちの間では不信感が生まれてしまっているので、いくら話し合ってもうまくいかなかったのです。そこで、第三者である当方が間に入ることで話し合いが進むようになり、親族間の”対立”を避けて最終的に兄弟全員が同意し、裁判に至ることなく売却することができました。

 

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不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

不動産相続のプロが解決!危ない実家の相続

松原 昌洙

毎日新聞出版

本書では、「富裕層ではない一般の人」が親の死亡で実家の不動産を相続したときに起こるトラブルに焦点を当てて、その背景や原因についてわかりやすく説明し、解決策や予防策を紹介します。

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