エンダウメント投資とは、米国の名門大学などが実践している「寄付金で財団や基金を設立し、寄付で集められた資産を元本にして運用する投資」のことで、継続して高い利回りをあげています。今回は、エンダウメント投資がなぜ高いパフォーマンスをあげているのか、その強さの秘密に迫ります。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『エンダウメント投資戦略』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「エンダウメント」といえば「米国の大学財団」のこと

金融市場にはさまざまな投資家が存在します。そのなかでも、いつも注目を集める影響力の大きな投資家としてメディアなどにもよく登場するのが、日本国内であれば、GPIF(Government Pension Investment Fund)です。日本語では年金積立金管理運用独立行政法人というのが正式名称ですが、あまりにも長くてピンとこないので、たいてい“GPIF”と呼ばれます。

 

ホームページをみると、運用状況などに関する詳細な情報開示がなされており、とても参考になります。じつに運用資産額は137兆円(平成26年度第3四半期末)と、世界最大規模の機関投資家です。

 

国外に目を転じると、ソブリン・ウェルス・ファンド(略して“SWF”)やカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などが注目を集める存在です。SWFとは、各国の政府が出資する投資ファンドで、アブダビ投資庁(ADIA)やシンガポール政府投資公社(GIC)、中国投資有限責任公司(CIC)などが有名です。

 

その規模は大きなもので100兆円近いといわれています。また、カルパースは年金基金としては米国最大規模を誇ります。

 

しかしながら、資産運用業界で長く畏敬の念をもって知られる機関投資家といえば、多くの人が米国のエンダウメント(大学財団)を挙げるでしょう。

 

エンダウメントのもともとの語源は非営利団体の業務運営のために寄付金で設立された財団を意味し、歴史をたどると紀元176年にアテネの哲学者マルクス・アウレリウスが設立したものが発祥ともいわれています。金銭や不動産などの寄付で集められた資産の元本を大事に保全しながら運用し、運用収益を団体の活動支出に充てるものでした。

 

現代では、資産運用の世界でエンダウメントといえば、米国の大学、なかでもアイビー・リーグの名門ハーバードとイェールが双璧です。ともに2兆円を超える規模の資産を積極的に運用し、過去20年前後にわたり、年率平均10%を超えるリターンをたたき出して、現代の大学の競争力の源泉とされる財政力の飛躍的向上に大きく貢献しました。

 

ハーバード大学もエンダウメント投資で資産運用(画像はイメージです/PIXTA)
ハーバード大学もエンダウメント投資で資産運用(画像はイメージです/PIXTA)

 

世界中から有能な教授・研究者・学生を引き寄せることのできる魅力的な環境・待遇を用意するために、名門大学はその財源となるエンダウメントの強化拡充に注力しているのです。

 

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エンダウメント投資戦略

エンダウメント投資戦略

山内 英貴

東洋経済新報社

米国屈指の名門ハーバード大学やイェール大学は、実は世界でもっとも先進的な機関投資家だった! その投資哲学から実際の運用手法、さらには個人投資家のための活用事例に至るまでわかりやすく解説する。

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