2025年には、日本企業全体の1/3にあたる127万社が「後継者不在」になると予想されています。会社を継承する人が見つからない場合、選択肢の一つとして考えられるのが「M&A(合併と買収)」です。しかし、M&Aにあまりいいイメージを持っていなかったり、何から始めたらいいのかわからなかったりする経営者もいます。そこで今回は、株式会社WealthLead(ウェルスリード)代表取締役シニア・プライベートバンカーの濵島成士郎氏が、M&Aの基礎知識をわかりやすく解説します。

重要事項を自分で決めるには2/3以上の議決権が必要

まずは、M&Aとは何か? について基礎知識を確認しておきましょう。次の【図表】をご覧ください。

 

[図表]M&Aとは?

 

企業が提携する場合、大きく分けて「資本提携」と「業務提携」に分けられます。広義の意味でのM&Aは、資本の提携が絡むものを指します。

 

ちなみに、M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略であり、狭義の意味では、買収(Acquisitions)と合併(Merger)のことを指します。

 

さらに、議決権比率(持株比率)が低い案件はM&Aと呼ばず、「過半数を握る=経営権と取る」案件だけをM&Aとする考え方もあります。しかし、ここでは、資本が絡むものをM&Aと定義します。

 

資本が絡みますので、議決権比率(持株比率)がポイントになります。次の3つの数字はとても大切ですので、必ず頭に入れておいてください。

 

【議決権比率で重要な3つの数字】
1. 33.33%(1/3)
2. 50.1%(過半数)
3. 66.66%(2/3)

 

もうおわかりだと思いますが、会社法上、株主総会の普通決議で決議できる項目は過半数、特別決議事項は2/3以上で決議が可能となります。

 

普通決議、特別決議のそれぞれ主な項目を確認しておきましょう(取締役会設置会社と取締役会非設置会社とでは、若干の違いがあります)。

 

【普通決議】※過半数が必要
・役員の選任や解任
・役員報酬の決定
・剰余金の処分や配当
・自己株式の取得
・譲渡制限株式の譲渡による取得承認
・貸借対照表や損益計算書等、計算書類の承認

 

【特別決議】※2/3以上が必要
・定款の変更
・募集株式の募集事項決定
・合併や会社分割
・株式交換、株式移転
・事業譲渡
・株式併合
・資本金の額の減少

 

ご覧の通り、議決権の過半数を持っていないと役員を解任されてしまう可能性があり、役員報酬や配当金も自分で決めることができないのです。

 

さらに、会社にとっても株主にとってもより重要な事項、つまり、合併や事業譲渡、株式移転や株式交換を活用したグループ再編等は、2/3以上の議決権を持っていないと決定できません。

 

また、募集株式の募集、つまり、第3者割当増資などによる資本の調達も2/3以上の賛成が必要となります。さらに、剰余金配当、残余財産分配、議決権について、株主ごとに異なる取扱いをする旨の定款変更をする場合は、3/4以上の決議が必要な特殊決議項目となります。

 

まとめると、会社の大事なことを自分で決めたいと思えば、2/3以上の議決権を保持する必要があります。逆に言うと、1/3超の議決権を持っていれば特別決議を阻止することができるので、脅威にもなりますし抑止力にもなるのです。

 

では、M&Aを行う売り手、買い手はそれぞれどのよう目的、狙いがあるのかを確認しておきましょう。

 

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