オルタナティブ投資とは「伝統的な資産の株式や債券とは異なる値動きの商品に投資し、リスクを軽減して運用する手法」のことをいいます。今回は、オルタナティブ投資にはどのような手法があるのかを具体的に見ていきます。※本連載は、GCIアセット・マネジメント代表取締役CEOの山内英貴氏の著書『オルタナティブ投資入門―ヘッジファンドのすべて』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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「コモディティ(商品先物)投資」…実物資産に投資

オルタナティブ投資の特徴として、株式や債券などの伝統的資産クラスと低相関で、ポートフォリオに効率的な分散効果をもたらすことが挙げられる。

 

農産物や貴金属など実物商品への投資は、金融市場と伝統的には相関性が低いことや、インフレ・リスクを長期的にヘッジする効果が期待できることから、オルタナティブ投資対象として活用されている。

 

実物資産への長期投資と、各国の取引所に上場されている商品先物に投資する手法と、流動性や時価評価、投資回収期間などが大きく異なるアプローチが存在する。

 

このうち、商品先物取引を活用してアセットクラスとしての商品に投資を行う方法は、インデックス投資の形態を中心に内外の機関投資家にも普及しつつある。しかしながら、金融商品と異なり、商品(コモディティ)は配当や利息を生まない。

 

また、本来、商品先物相場自体は実物経済における生産者と消費者のリスク移転を目的に誕生したものであり、フローの実物経済に即した存在であるにもかかわらず、実需を有しない(現引することのない)キャピタルゲイン狙いの資金が大量に流入すると、金融市場と比較して圧倒的に小規模な商品市場の価格形成や流動性に問題が生ずる可能性がある点には留意が必要である。

「インフラ・天然資源投資」…石油ガスや空港に投資

広義のコモディティ投資の中でも、長期的に絶対リターンを追求して、エネルギーや森林・農産資源など天然資源に直接投資を行う手法もある。

 

石油ガス投資の分野では、米国を中心とする石油ガス開発会社が、自己資本の大きなメジャーを頂点に、米国メキシコ湾や諸外国の石油ガス掘削地域で油田ガス田の開発を行っている。

 

また、ガス・石油用のパイプラインの敷設開発も続けられている。こうした開発案件に投資を行う際、新しい鉱区、油田の発見開発には大きなリスクと膨大な資金が必要となる。

 

したがって、投資家から集めた資金をファンド化して、リスク分散のために複数の石油・ガスプロジェクトに投資する手法などが用いられている。また、同様にパイプラインの開発敷設事業に投資するファンドもある。

 

こうした石油ガス開発の投資は、通常の金融市場とは直接の相関が低く、投資の分散効果は大きい。しかし、製品である原油やガスの価格の変動に大きくリターンが左右されるというリスクはある。

 

石油ガス開発への投資同様に、木材あるいはパルプ用の森林開発への投資を行うものもある。リターンの源泉は、住宅関連需要の増加で丸太・木材価格が、土壌管理技術の向上で森林生産性・収穫率が上昇して、インカムが増加することが挙げられる。

 

また将来の森林の需給関係は、需要>供給と考えられており、森林相場も上昇が見込まれている。したがって、購入した森林全体を最終的に売却することでキャピタルゲインも期待できる。

 

逆に、住宅需要が低迷して木材価格が下がったり、自然災害により森林が重大な被害を受けたりすることが大きなリスクである。こうした森林ファンドは米国を中心に販売されており、平均年リターンが30%という森林ファンドもある。

 

最後に、空港・港湾施設や高速道路などの公共的な各種インフラへの投資もオルタナティブ投資のひとつと認識することができる。

 

これらは投資から資金回収までの懐妊期間が非常に長く、流動性が低いことから、期待リターンは高い。また、期間中の時価評価が困難であるが故に、投資期間中はポートフォリオの分散効果が期待できる。

 

従来は公的資金や銀行によるプロジェクト・ファイナンスが主体であったものをファンド化したものが一般的だが、最近では、その高い経済成長に期待して新興国のインフラ案件も増えている。

 

しかしながら、オルタナティブ投資として期待される効果は、期間の長さや流動性の低さ、政治社会その他の各種リスクなど、独特のリスクの裏返しであることを十分に認識したうえでの取組みが必要である。

 

山内 英貴

株式会社GCIアセット・マネジメント 代表取締役CEO

 

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