日本では年間約130万人の方が亡くなっています。つまり相続税の課税対象になろうが、なかろうが、130万通りの相続が発生しているのです。お金が絡むと、人はとんでもない行動にでるもの。トラブルに巻き込まれないためにも、実際のトラブル事例から対策を学ぶことが大切です。今回は、編集部に届いた事例のなかから、遺言書にまつわる三人兄弟のトラブルについて、相続を専門とする円満相続税理士法人の桑田悠子税理士が解説します。

仏壇の引き出しから遺言書…その内容に兄弟が絶句

葬儀を終え、段々と落ち着きを取り戻していたころ。C子さんが遺品整理をしていると、仏壇の引き出しから、一通の封筒を見つけました。表に書かれていたのは「遺言書」の文字。

 

「お義母さん、いつの間に遺言書なんて……」

 

遺言書の存在は、兄弟の誰も知りませんでした。

 

「遺言書を作ったこと、誰かに伝えておいてくれよ母さん。誰も見つけなかったら、どうしたんだよ」

 

後日、遺言書は三人の兄弟の立会いのもと開封されました。そこには「実家は売却のうえ、預貯金と合わせて、三人の兄弟とC子さんで等分すること」とだけ書かれていました。

 

「なんでC子さん!?」

 

確かに、C子さんは相続人ではありませんが、仕事で忙しい兄弟たちに代わり、Aさんの面倒を見てくれていました。しかし兄弟たちと同じだけの遺産を手にするほどだったのか、次男も三男も納得がいかない様子でした。そこで次男のDにある疑念が浮かんだといいます。

 

Dさん「あの遺言書、C子さんが見つけたんだよな。母さんに無理やり書かせたりしたんじゃ……」

 

Eさん「そもそも、これって母さんの字か? 偽物じゃないのか?」

 

Bさん「おい、お前ら! いくらなんでも失礼だろ!」

 

Dさん・Eさん「そっちこそ、最初から母さんの遺産が目的だったんじゃないのか!」

 

Bさん「そんなワケ、ないだろう!」

 

Eさん「いくらなんでもおかしいんだよ。俺らと同じだけC子さんが遺産を受け取るなんて。母さんの子どもは、俺ら3人だけだぞ。C子さんは部外者だろ」

 

兄弟たちの主張はぶつかり合い、遺産相続は終わりのない泥沼状態に陥りました。見るに見かねたC子さんは、遺産の受け取りを辞退。結局、Aさんの遺産は三人兄弟で三等分されることになりました。

 

「あんなに仲のいい兄弟だったのに……。遺言書なんて見つけなきゃ良かった」とC子さん。結局、遺産相続がきっかけで、兄弟たちが口をきくことはなくなり、家族の交流もなくなったとか。悔やんでも悔やみきれないと、C子さんの涙は止まることがありませんでした。

 

まさか、こんなことに…(※画像はイメージです/PIXTA)
まさか、こんなことに…(※画像はイメージです/PIXTA)

 

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※本記事は、編集部に届いた相続に関する経験談をもとに構成しています。個人情報保護の観点で、家族構成や居住地などを変えています。

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