発生から10年…大震災の教訓は生かせているか?
震災による死者・行方不明者は1万8400人を超え、建物被害は全壊・半壊合わせて40万戸以上とされていますが、人的被害は首都圏でも。東京都総務局「東日本大震災の被害概要」によると、死者7名、負傷者117名建物の全壊・半壊は6455戸、火災が34件発生。東京・晴海では最大1.5mの津波を記録しています。
内閣府『帰宅困難者対策の実態調査』によれば、地震発生時、東京都には約352万人、神奈川県には約67万人、千葉県に約52万人、埼玉県に約33万人、茨城県南部に約10万人、計約515万人の帰宅困難者がいたと言われています。東京都の帰宅困難者352万人は、外出者(自宅外)の約40%とされていることから、東京都では約530万人が3月11日のうちに、なんとか帰宅した計算になります。
17時すぎ、当時の枝野幸男官房長官が記者会見で「帰宅ではなく、職場など安全な場所で待機していただきたい」という呼びかけましたが、前出の調査では、17時台までに47.4%が帰宅するために会社や学校を離れたとしてます。また帰宅した人にその手段を尋ねたところ「徒歩で帰宅した」のが37.0%ということから、地震発生後、17時台までには約100万人が歩いて家路を急いでいた、と推測されます。
歩いて帰宅しようと決めた人を含めて、当時、都心は多くの歩行者であふれていました。なぜ、そのような状況になったのか。その要因のひとつが、鉄道会社の対応でした。前出の記者会見を受け、JR東日本は終日運休を決める一方、郊外へと延びる私鉄は運転再開を目指したのです。そこで「まずはターミナル駅まで歩くか……」という選択をした都心のオフィスワーカーも多くいたというわけです。その後、私鉄は続々と運転を始めます。
21時55分 西武新宿線(西武新宿〜所沢)と池袋線(池袋〜所沢)運転再開
京王線(新宿〜聖蹟桜ヶ丘)や井の頭線、東急線各線、小田急線も同日中に運転を再開し、帰宅困難者は次第に減っていきました。
東日本大震災では、道路や鉄道、電気、ガスなどのインフラの崩壊、自治体職員自身が被災するなどし、防災関係機関の活動が十分に機能しなかったという報告が多数ありました。そこで注目されてのが「自主防災組織」です。災害対策基本法第5条2において規定されている、地域住民による任意の防災組織で、災害発生時はもちろん、日ごろから地域内の安全点検や住民への防災知識の普及・啓発、防災訓練の実施など、災害への備えを行います。
総務省消防庁『令和元年版 消防白書』によると、全国1747市区町村のうち、1688市区町村で自主防災組織が結成され、管内5860万5994世帯のうち494万17219世帯(84.3%)をカバーしています。
都道府県別に見ていくと、自主防災組織によるカバー率が最も高いのが、阪神淡路大震災を経験した「兵庫県」で97.7%。「高知県」97.1%、「大分県」97.0%、「香川県」96.8%、「山口県」96.7%と続きます。一方でカバー率が低いのが「沖縄県」で33.1%。「青森県」「北海道」「千葉県」「長崎県」と続きます。傾向として西高東低、南海トラフ巨大地震の懸念から、太平洋側の地域のほうがカバー率が高い傾向にあります(図表1)。
東日本大震災で、人々の防災意識は高まりましたが、人の記憶は風化しやすいもの。いまから4年前に内閣府が行った『防災に関する世論調査』では、地震に備えた対策として行っていることとして、「食料等の準備」が45.7%、「懐中電灯等の準備」が43.3%、「家具・家電などの固定」40.6%、「避難場所の確認」が38.8%、さらには「特に何もしていない」が10.4%。地震への備えとしては限りなく100%であるべきですが、すべて半数以下というのが現状でした。
また前出の『帰宅困難者対策の実態調査』では、10年前の3月11日、帰宅中、ひたすら自宅へと歩くなか必要と感じたものとして、「携帯可能なテレビ・ラジオ等」で39.6%、「携帯電話のバッテリーまたは充電池」38.1%、「歩きやすい靴」33.9%、「飲料水」30.0%と回答しています。震災の際、無理に帰宅せずに会社などに留まるのが正解とされていますが、いまやインフラとなったスマートフォンのバッテリーや飲料水は、もしもの場合に備えて、いつ何時も持ち歩いていたほうが良いものでしょう。
東日本大震災以降も、熊本地震など甚大な被害を与えた地震災害もありましたし、昨今は台風や大雨による大規模な水害も記憶に新しいところ。しかし防災意識が希薄になっている感は否めません。東日本大震災から10年。震災を知らない子どももたちも増えています。10年前にあの日を振り返り、まずは身近な人と身近な防災について話し合ってみてはいかがでしょうか。
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