アジア・オセアニアリートはもみ合いの展開
■2021年2月のアジア・オセアニアのリート市場は、新型コロナワクチン普及による経済正常化期待と、世界的な金利上昇への警戒感が交錯し、もみ合う展開となりました。3月5日現在、アジア・パシフィック・リート指数(除く日本、現地通貨ベース)は1月末比▲0.7%、香港は同+4.5%、シンガポールは同▲3.6%、オーストラリアは同+0.04%となっています。
■香港は、新型コロナ感染抑制のための規制措置の緩和の発表と、政府が中国との越境再開の見通しを示唆したことが好感され上昇しました。オーストラリアは、感染抑制により商業施設リートが底堅く推移しましたが、これまで業績好調で上昇してきた銘柄群は、長期金利の上昇が重石となりました。シンガポールは、内需主導で景気回復が進む中、長期金利の上昇を受けて、堅調に推移してきた産業施設関連リートを中心に下落しました。
重要性高まるESGの「S」にも注目
■新型コロナ感染拡大を背景に新たな生活様式が求められる中、環境(E)、社会(S)、企業統治(G)の課題に取り組む企業へのESG投資はリート市場にも広がっています。オーストラリアの大手商業施設リートは、ショッピングセンターにチャイルドケア施設を導入する計画を発表しました。共働き世帯が増え、託児所等が商業施設内にあれば、消費者の利便性が向上し、家族で長く滞在する効果も期待できます。今後、アジア・オセアニアの商業施設に同様の動きが広がると考えられ、このようなESGのSに貢献する様々な取組みが注目されます。
相対的に堅調な経済状況を背景に、業績に応じた展開を見込む
■新型コロナ変異株による感染拡大や金利の急騰等はリスク要因ですが、各国の大規模な金融・財政政策や新型コロナワクチンの普及等から景気は回復傾向にあり、中期的にリート市場は底堅く推移すると予想します。シンガポール市場は底堅い推移を想定します。今年景気が回復する可能性が高く、内需に加え渡航規制緩和による外需の回復が期待されます。商業施設やホテルの業況も他国に比べいち早く回復すると見られます。香港市場はレンジでの推移を想定します。新型コロナを巡り一進一退が続いていますが、感染抑制のための規制の解除、国境開放等が進めば魅力的な配当スプレッドの水準が選好されると考えます。オーストラリア市場は、景気回復の度合いと金融政策の方向性の両睨みから横ばいを予想します。
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(2021年3月9日)
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